もはや推理小説「かぐや姫」の壮大なカラクリ 随所に散りばめられた日本語のマジック

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超難題の有名な場面である。どれをとってもかなり変わったブツだが、倉持の皇子の難題は、ほかとちょっと様子が違う。まず、ほかの品については「あり」となっているが、蓬莱の島についてだけ「なり」、つまり伝聞調で語っている。

また、その品だけは詳しい説明がついているが、ほかのものについては名前が記されているだけで詳細は何も語られていない。すべての注文について実在が疑わしいが、1つだけが伝聞になっているのは偶然だろうか。

その「なり」を聞いた倉持の皇子が、「かぐや姫も知らないのかよ!」とその瞬間に悟っていたとしたら……。理想の女を手に入れたくて仕方なく、ずる賢い本性が出てきたのかもしれない。聞き入れた情報に基づいて作れば、バレたりしないさ、とその場で思いついたかもしれないが、そのコトバをかぐや姫に言わせたのは……そう、作者にほかならない。

つまり最初から後の展開を読者の前にちらつかせて、さりげなくヒントを残し、緻密に準備をしていたということが考えられる。助動詞1つなのに、そこまでの含みを持たせるなんて、もうなんというか、ブラボー!

謎を1つ解いたら、次のトリックが…

そのようなカラクリが施されているのは、倉持の皇子の話だけではもちろんない。それぞれのエピソードに言葉遊び、引用、枕詞、掛詞……謎を1つ解いたら、次のトリックがすぐに用意されているという状態だ。

各エピソードを締めくくる語源話もいい例。偽の鉢を捨てた後も姫に言い寄った石作の皇子の話にちなんで、厚かましい態度を「恥(鉢)を捨つ」と言うようになったとか、貝だと思って燕の糞を握ってしまった中納言の話にちなんで「かいなし(買い無し・甲斐無し)」と言うようになったとか。

現代人が読むと、本当だと思って引っかかりそうだが、その語源は全部でたらめらしい。音と文字を組み合わせて、ストーリーのコミカルな側面をさらに強調し、真実であるかのようにスラスラと書き連ねるなんて、誰にでも簡単にできることではない。

実際何を伝えたかったかを本人に確認できないのだから、『竹取物語』を先取りのSF小説として読んでもよし、最高のエンターテインメントとしてクスクス笑いながら楽しんでもよし、当時の社会への辛辣な風刺小説として解釈してもよし、ミカドの純粋な恋や娘を喪った親の悲しみに涙を流すことももちろんできる。

しかし、そのすべてはいっさい抜けのない、完璧なコトバによって実現されている、というのはどの解釈を選んでも看過できないポイントである。

次また読んだときに、どんな世界が目の前に広がるだろう、と思いながら今からキュンキュンドキドキ。これだから、ハラハラしながら現場に戻る犯人のごとく、私もまた妄想の世界に消えていき、名探偵のごとく飽きることなくコトバの裏に潜んでいる新たな物語を探し続けるのであろう……。

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