要領がよく、財産もある倉持の皇子は、無駄に命を落とす可能性が高い冒険に出るのではなく、みんなをだますプランを緻密に練り上げる。旅に出たと偽り、しばらく身を隠している間に、かぐや姫の描写にそっくりな品を一流の職人に作らせる。
そして完璧なものが出来上がり、ウキウキしながらそれを持って自信満々に姫の屋敷を訪ねる。それを見たかぐや姫も、竹取の爺さんも、周囲の人もみんな誰一人疑わない。そこで、近場でぬくぬくと隠れていただけなのに、ペテン師らしく、あることないことを熱く語る。
かぐや姫も驚いた話しっぷり
しつこいよ!と言いたくなるようなエピソードの羅列。かなり自分に酔っている感じがありありと伝わってくる。語れば語るほど自信が付き、楽しくなっちゃってあれもこれもディテールをつけたくなった、という心理が見事に表現されている。
襲い掛かってくる得体の知れない怪物だの、海をさまよっているという設定なのに草の茎を食べただの、支離滅裂な話だけど、聞いている人を魅了してしまう話術ゆえに妙に説得力を帯びている。
あえてしわくちゃな服を着て、ついさっき謎の島から戻ってまいりましたという顔をして竹取の爺さんの屋敷を訪れ、自らでっちあげた物語を披露する倉持の皇子。興奮しすぎて語尾に力が入り、気づかないうちに手が勝手に動いちゃうみたいな光景が目に浮かぶ。爺さんは大喜び、かぐや姫は御簾に隠れて、やばい……どうしようと思いながら頭が真っ白。
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