東京のホームレスは今晩どこで眠りにつくのか 大阪など大都市周辺で暮らす彼らの変遷

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また、廃品を買い取ってくれる業者(金属回収業者、紙類回収業者など)も基本的に都市部でしか回収をしていない。ホームレスは自分の足で歩くのと自転車が移動手段なので、大都市部でないと廃品回収業は成り立たないのだ。

食べ物を拾う場合も、やはり都市部のほうが有利だ。チェーン店やスーパーなどから廃棄される食品を定期的に手に入れることができれば、とりあえず飢えはしのげる。ただ、現在はこうしたお店の規則が厳格化して、廃棄食品を手に入れるのも難しくなってきている。

ホームレスの住み家はいずこへ?

それでは都市部のどこで、ホームレスは眠っているのだろうか?

これは時代によって変化してきた。

かつては駅の敷地内に居を構える人が多かった。1990年代中旬には、新宿駅西口の地下の広場にホームレスがたくさん住んでいた。新宿駅から都庁へ向かう通路にズラッと段ボールで作られた家が並んでいた。

ホームレスの家と言えば、段ボールというイメージがある人も多いだろう。軽く、加工しやすく、保温性も高いが、雨風には弱い。地下やトンネルの中など天井がある場所では良いが、屋外では難しい。実は段ボールハウスはかなり限定された場所でないと成り立たない。

当時はホームレスの段ボールハウスにアーティストが絵画を描く「段ボールアート」という運動もあった。

たびたび問題視されていたが、1996年に「動く歩道」を設置するという名目で住人に退去要請がなされた。要請に従わなかった人には強制執行がなされることになったが、ホームレスたちは激しく抵抗し暴動状態になった。怒号が飛び交い、消火剤が撒き散らされる大騒動はニュース番組でも大きく報道された。

強制執行の後もまだ新宿駅西口地下で段ボールハウス生活をする人はいたが、1998年に大火事が起きてしまった。ホームレス複数人が亡くなった。その後間もなく、住人たちは駅敷地内から退去した。

その前後に新宿駅西口地下道には、ホームレスが居を構えそうな場所に円錐を斜めに切った形のオブジェが設置された。

ホームレスなどを排除するためのオブジェで「排除アート」と呼ばれる。英語では「敵対的建築(Hostile architecture)」と呼ばれる。公園のベンチで横たわれないように真ん中に肘掛けをつけたり、高速道路の高架下に石を設置したりするのも排除アートである。

駅近くで昼寝をするホームレス(筆者撮影)

ホームレスになると、なかなか眠らせてももらえないのだ。

駅は年々、セキュリティーが厳しくなり、ホームレスの姿を見かけることは減った。

現在でも駅の通路や階段で休んでいるホームレスを見ることはあるが、終電が走った後にはシャッターを下ろして完全に閉鎖してしまう駅が多い。

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