人望のない上司は部下のホンネがわかってない 仕事上の鎧を捨て正直に伝えることが大事だ

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しかし前述のように「コミュニケーション」という観点から考えた場合、上司が対立を避けると悲惨なことになるというのだ。例えば「上司としての難しい役割を避けてしまった」キャンダー・インク時代のキム氏の失敗が、まさにそれにあたる。

なぜ、「ホンネ」であるべきなのか?

では、なぜ「ホンネ(キャンダー)」なのか? この問いに対しては、キム氏のある指摘が重要な意味を持つ。

それは、「チームメンバーがお互いに(上司にも)ズバリと言い合えるような文化をつくるためには、全員が批判に慣れなければならない」ということ。お互いへの批判は、意味があいまいではいけないし、それでいて謙虚でなければならないというのである。

「正直さ(オネスティ)」ではなく「ホンネ(キャンダー)」という言葉を選んだのは、自分が正しいという思い込みが謙虚ではないからだ。「ホンネ」なら、自分が現状をどう見ているかをただ伝え、メンバーにも彼らの見方を教えてもらえばいいという意味にとれる。もし自分が間違っていたなら、間違いを知っておいた方がいい。
少なくとも、読者の皆さんが間違いを自覚したいと思っていることをわたしは願う。(46〜47ページより)

もちろん、ホンネを伝えるには勇気が必要だろう。そうすることによって、相手が怒ったり、仕返しをされるのではないかと心配になったり、何か取り返しのつかないことになりそうな気がしてしまうものだからだ。

しかし意外なことに、ホンネを直言すると、大抵はそうやって恐れていることと正反対の結果につながるのだとキム氏は言う。ほとんどの場合、相手は腹を割って話せる機会をありがたいと感じるものだというのである。

もしかしたらはじめのうちは、怒ったり、ムスッとしたりするかもしれない。だが、やがて上司が部下を「心から気にかけている」ことがわかれば、悪い感情はすぐに消えるということ。

同じように、部下同士もお互いに「ホンネに徹する」ようになれば、上司は仲裁に入らずに済むことになる。上司がホンネに徹するよう励まし、支えていれば、チームの風通しがよくなり、腹の底のモヤモヤが表に出て解消されるというわけだ。

その結果、部下たちは仕事にも同僚にも職場にも好意的になれる。みんながそういう状態になると、チームはより大きな成功を収めるようになる。そしてそこからつながった幸福感が、成功を超えた成功になるというのだ。

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