人望のない上司は部下のホンネがわかってない 仕事上の鎧を捨て正直に伝えることが大事だ
そこで目にしたのは、ズバズバと遠慮のない、それでいて前向きな意見が交わされる環境だった。
例えばキム氏にとって衝撃的だったのは、グーグル共同創設者のラリー・ペイジと、ウェブスパムの対策チームを率いるマット・カッツの会議に同席したときのこと。
かみ合わない議論が教えてくれたこと
ラリーの考え方とマットのそれは正反対で、まったくかみ合うことがなかった。その結果、普段は友好的なはずのマットが、まったく引き下がろうとしないラリーを怒鳴りはじめたというのだ。もしラリーのアイデアが通れば、「ゴミみたいなくだらない仕事」に忙殺され、いつまでたっても仕事が終わらなくなると。
そこでキム氏は以後、ラリーのやり方をまねて、それまでの自分にはなかったスタイルを身に付けようと決心する。興味深いのは、その結果だ。やがてチームメンバーが心を開きはじめ、自由に議論ができるようになり、一緒にいるのが楽しくなったというのだ。
本書の前半においては、そのエピソードに代表される数々の経験によって身に付けたテクニックが紹介されている。
信頼関係を築くことは、決して楽ではないだろう。なにしろ、「あれとこれとそれをやれば、いい関係ができる」などというマニュアルは存在しないのだから。ましてや上司と部下の関係においても、思いがけないことは頻発するものだ。
だが、次の2つの姿勢を組み合わせれば、前進の助けになるとキム氏は主張している。
根底にあるのは、「上司は、部下の仕事の能力だけを気にかけていては務まらない」という考え方である。信頼関係を築くには、こちらの人格を丸ごと動員し、部下の一人ひとりを人間として気遣うことが必要。仕事だけの関係では足りないということだ。
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