仕組み債、デリバティブ投資で多額の含み損! 大阪産業大学の杜撰な資産運用
実は、このスワップ取引の契約は古谷理事長にとって「事後承諾」だった。古谷理事長や森山常務理事(当時)らの印が押されたのは08年1月28~29日にかけてで、契約締結から4~5日過ぎていた。また、稟議書の備考欄には高橋宣昭財務部長の直筆で「本件の約定に関しては、役員の御指示により別途対応がございました」と記されている。「役員の御指示により別途対応」とは、「ある役員が独断で野村証券と購入の契約をしたので、事後承諾されたしという意味だ」と大産大関係者が明かす。
そして、このスワップ取引は大産大に深刻な打撃を与えていく。円高の進行で、契約からわずか2カ月後の08年3月末時点で3億円を上回る含み損を抱える羽目に陥った。9月のリーマン・ブラザーズ破綻を契機に豪ドルが大暴落し、今度は月々のスワップ収支がマイナスに転落。11月および12月には、同取引だけで一月に支払わなければならない支出額(=純損失)が900万~1000万円に膨れ上がった。
さらに驚くべきは、損失が膨らむ中、新たなスワップ取引を契約したことだ。関係者は森山副理事長が野村証券の担当者へ携帯電話で直接連絡し、取引を決める様子を目撃している。11月7日付で契約したのは、以前と同じ商品内容のスワップ取引(取引規模や為替レートの条件は異なる)。いわゆる「ナンピン買い」だが、1月に組んだスワップ取引の損失が大きすぎるため、穴埋めするまでに至っていない。逆に豪ドル安が進めば、損失はさらに拡大する。豪州に拠点があるわけでもなく、豪ドル取引の必要性は乏しい。「単なる投機で、勝つと1をもらえるが、負けると3を払う『丁半ばくち』のようなもの」(大産大関係者)。このままのペースで行けば、08年1月に契約したスワップの年間支払額は1億円近くに達する。10年契約なので、今、解約した場合、「違約金を含めて10億円をはるかに上回る支払いが発生するだろう」と、ある外資系証券関係者は推測する。
大産大は仕組み債の投資でも多額の損失を抱えている。週刊東洋経済が入手した08年3月期末の決算書付属明細では、仕組み債の投資で40億円を超す含み損を抱えていることが判明した。また、その後の円高で含み損が拡大しているとみられる。
1年目だけ利率20% 債券の異常な商品設計
仕組み債の異常な商品性は、セールス資料から一目瞭然だ。十数本に上る仕組み債の大半は、野村証券が売り込んだもので、同社が大産大に提供した「ユーロ債のご案内」という資料には目を疑う記述がある。
「野村ヨーロッパファイナンスNV」(オランダ)という野村ホールディングスの金融子会社が07年6月19日に発行したユーロ債(購入価額は10億円)のクーポン(表面金利)は、当初の1年間は年20%もの超高金利に設定されていた。ところが、2年目以降のクーポンは円・ドル相場または円・豪ドル相場の動向に左右される仕組みで、金利0%を下限にした一定の計算式に基づいて決められている。