仕組み債、デリバティブ投資で多額の含み損! 大阪産業大学の杜撰な資産運用
期中に監査契約を破棄 問われる運用管理体制
だが、大産大はリスク管理体制を整備するどころか、驚くべき行動に出る。監査契約の破棄をトーマツに通告したのだ。昨年9月22日付で「監査契約を継続しないこととなりましたので、ご通知いたします」との文書を理由の説明もなしに堤晶子事務局長(当時)名で送っている。そして10月31日付で「監査法人アイ・ピー・オー」(代表社員は渡邊功公認会計士)と新たに監査契約を結んだ。同社の本社は偶然にも大産大のサテライトキャンパスと同じく、大阪市北区梅田1丁目の「大阪駅前第3ビル」内に置かれている。
監査法人変更の理由について、森山副理事長は「トーマツが監査報酬の値上げを求めてきたため」と説明する。一方で、大産大関係者は「3月決算で仕組み債やデリバティブの強制評価減を免れることが本当の狙いだ」と話す。この指摘が事実ならば、都合のいい監査意見をカネで買おうとの意図にほかならない。
また、昨年12月にはメインバンクである三井住友銀行からの優先出資証券購入(増資引き受け)の依頼を断り、銀行預金を解約して野村ホールディングスの無担保劣後社債の購入に踏み切るなど、野村との緊密な関係をさらに深めている。
森山副理事長は週刊東洋経済の取材に応じたものの、同氏の説明は多くの点で間違いがあった。取材時点ですでに監査法人アイ・ピー・オーとの契約を結んでいたが、「これから結ぶ」と説明。有価証券やデリバティブの運用規程がないにもかかわらず、「ある」と答えた。1年目に極端な高金利を得る仕組み債については、「やばいものはやってはいけないと思っているし、理事長も手堅く行けという主義」と発言。豪ドル安で損失が出ている懸案のスワップ取引については「今のところ収益が出ている」と虚偽の説明をした。
1月6日、文部科学省は全国の学校法人に対し、資産運用のあり方に注意を喚起する通知を出している。だが、文科省は個々の大学の詳細な投資実態を把握しているわけではない。今回の大産大の事態は、学校運営の先行きを憂慮した関係者らの内部告発があったからこそ明るみに出た。このままでは事情を知らない学生たちが思わぬ被害を受けかねない。文科省は同大学を立ち入り調査し、ずさんな運用を直ちにやめさせるべきだ。
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金融の激変が大学を直撃 リスク管理強化が急務
国立大学と異なり、私立学校においては資産運用に関する公的な規制がない。多くの学校法人は「寄付行為」や「経理規程」などに基づき、余裕資金や特定資産(積立金)について、預貯金や元本毀損のおそれの小さい国債等の有価証券などで運用することを定めている。だが、「資産運用に関する具体的かつ明確な規程を定めないまま、ハイリスクな金融商品による資産運用を行っている学校法人も散見される」(大手監査法人の公認会計士)。また、「近年、学校法人における資産運用について、仕組み債やスワップ取引の割合が増加してきている。これらの金融商品については、元本毀損リスクの大きいものが含まれている可能性がある」(同会計士)。
そうした中、昨年来の金融情勢の激変で、有価証券投資やスワップ取引で多額の含み損を抱える学校法人も急増。文部科学省は1月6日、資産運用において現状の再点検や必要な規程の整備などを促す通知を学校法人に出した。
「特定非営利活動法人21世紀大学経営協会」が行った「大学法人における資産運用状況調査」(2008年2月発表)に関する私立大学からのアンケート回答からもわかるとおり、多くの私立大学が有価証券運用を行っている。ただ、リスク管理体制のレベルはまちまちのようだ。「学校法人内で資産運用に関するコミュニケーションがきちんと取れているか、この機会にチェックする必要がある」と同協会の高須賀伸成事務局長は指摘する。
(岡田広行 撮影:尾形文繁、ヒラオカスタジオ =週刊東洋経済)
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