令和でKADOKAWAの「万葉集」本が爆売れの理由 アマゾンランキング上位を後押ししたPR戦略

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メディアからの取材依頼が来ることも見越して、テレビ番組制作者が欲しい「画」づくりのために、発表から1時間半後には「令和」と入れた新しい帯も完成。通常出荷されるときの帯とは使っている紙は異なるが、まずは簡易版でも「画」をつくることを優先した。

取材を受けたテレビ番組では、ほぼすべてでその新帯が放送され、大きな宣伝効果を得ることができたという。ちなみに書店から「新帯がほしい」との要請を受けPDFデータを送り、実際にその帯を巻いた本が当日並んだところもあったようだ。

ユーザーがいちばん欲しい情報をいかに発信するか

大林編集長が強調するのはPR、とくに突発時に求められている情報をどの対象にどのように発信するかの見極めだ。

「どんな情報が得られたら、エンドユーザーがうれしいかを考えて最初に動いたのは間違いない。PRというと、会社の外側に向かって何をするかという認識になってしまいがち。でも本来的にPR活動におけるステークホルダーには自社の社員、従業員、取引先も含まれている。今回の一件は想定していなかった出来事だが、こういうときにこそPRが重要なんです」

突発的な事件などが起きると、当事者の著書や関連書が大きく注目されることがしばしばある。その突発時の初期対応が、その後の「商機」に大きく影響を与えるのは間違いない。書店の相次ぐ閉店や、本が売れないとの暗い話題ばかりの出版界ではあるが、KADOKAWAの「戦略的PR」はその打開のヒントになりそうだ。

成相 裕幸 会社四季報センター 記者

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なりあい ひろゆき / Hiroyuki Nariai

1984年福島県いわき市生まれ。明治大学文学部卒業。地方紙営業、出版業界紙「新文化」記者、『週刊エコノミスト』編集部など経て2019年8月より現職。

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