令和でKADOKAWAの「万葉集」本が爆売れの理由 アマゾンランキング上位を後押ししたPR戦略
社外に向けたPRにも大きなポイントがあった。プレスリリースの活用法だ。通常だと、メディア各社にプレスリリースを送り取材窓口を設けて、すぐに問い合わせに備えたくなるところだ。だが公表当日、個別のメディアに向けてはプレスリリースは送らなかった。
個別に取材依頼することも考えたが、今回のこのタイミングでは一般の人に広く告知する「面」での拡大を重視したためだ。いちばん先にリリースを送ったのは、一般のユーザーへのリーチが強いPR会社。話題の拡散を一般層から始めることで、拡散の「量」を増やすことを意図した。
その戦略があたりリリースを通じて同社のサイトに流入したアクセス数は前年1年分を1日で超えた。結果的に、そのリリース配信後30分で4件の取材申し込みが入ることにまでつながり、大きな宣伝効果につながった(翌朝以降はメディア個別の送信に切り替えている)。
最も一般層にリーチできる時間を狙い撃ち
プレスリリースの配信タイミングにも、意図的な思惑があった。リリースの作成に着手したのは公表から2時間後の午後2時頃。実はこの段階では重版の決裁や製作スケジュールなどは確定していない。
しかし、一般層がSNSやニュースサイトをチェックする傾向が強い、夕方の終業時間近くの午後5時近くに間に合わせるようと「見切り発車」で着手。「配信時間が遅れるほどに、各メディアへの転載時間も遅れる。そうすると(書店に立ち寄る前の)帰宅時間を逃してしまう」。
これまでの経験則から「重版するだろう」との予想のもと、作業を進め決裁が下りた段階で、リリースの中で穴あきにしていた部数などを手直しした。決定から5時間半後の午後5時7分に第1報となるプレスリリースを配信。直後にオリコンニュースで報じられた記事が同47分にはLINEニュースに転載、さらには午後6時39分にヤフーニュースでもリリースを元にした記事が配信された。
時間との勝負のなかで同時並行で進め、最も一般層にリーチできる時間に配信したことは、当日午後9時頃に『ビギナーズ』がアマゾン書籍売上1位になったことと間違いなくつながっているだろう。
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