令和でKADOKAWAの「万葉集」本が爆売れの理由

アマゾンランキング上位を後押ししたPR戦略

むろん当のKADOKAWAにしても、万葉集からの出典を事前に予想できていたわけではない。「直面してみて筋肉反射で動いたというのが正直なところ。ただ当社はメディアミックスなどの経験則も豊富で、編集、営業、広告、PRの担当者が横のつながりを意識している。自分が今何をしたら最大の効果があるのかを考えて動けたところもあるのかも」(大林編集長)。

「他社を含めて学術文庫では前例のないほどの重版では」と話す大林哲也編集長(編集部撮影)

今回も部署間で最初に何をやるのか決めたわけではなく、有志が集まって自分の仕事はさておき、自然発生的に関わろうという雰囲気になっていったという。

元号が公表された11時40分頃、打ち合わせで外出中だった大林編集長がまずいちばんに指示したことは、令和の出典の万葉集の原文を特定し、その該当する文章を写真に撮ってSNSに投稿することだった。「すべての作業を放っておいていいから、最速に特定して、どこよりも早く上げよう」。実際にその分野に詳しい編集者が特定し、SNSに投稿。新元号公表から約20分後の12時2分に配信するという早業だった。

宣伝よりもいちばん見たい情報を最速で発信する

最速で投稿することにこだわったことにもむろん意味があるが、それ以上に意図していたことがある。

「出版社の側からすると、自社の本の宣伝を考えがちになる。それも重要なことだが、いまみんなが(特定の情報を)知りたがっている状況では、そういうものは後からついてくることではないか。つまり『おまけ』みたいなもの。とにかく、今世の中の人がいちばん見たいと思っているものを最初に入れる。そこから後で考えればいいかなと」

結果、そのツイートは 公表2日で1400件のリツイート、2000を超える「いいね」となり、最初に典拠個所を特定した出版社という認識が広まった。

同時に社内への情報共有も進めた。同社の宣伝局が社内SNSを使って「全社員」に通知。SNSでの拡散を求めた。これをみて各部署の公式アカウントが「応援ツイート」を開始。社内が「それぞれがよかれと思う最大の効率と効果があることを提案してくれて、やる人がいなかったら『じゃ、やりましょう』ともって言ってくれた」(大林編集長)。

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