令和でKADOKAWAの「万葉集」本が爆売れの理由 アマゾンランキング上位を後押ししたPR戦略
4月1日に2019年5月からの新元号「令和」が発表されてから、出典が掲載されている万葉集の関連書が軒並み書店で売り切れになっている。講談社をはじめ人文系に強い筑摩書房などがこの特需を見逃すまいと既刊本の重版を決め、今月10~12日あたりに店頭に並ぶ予定だ。
にわかに盛り上がる出版界だが、とくに際立った売れ行きを見せているのがKADOKAWAの『万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』(以下、『ビギナーズ』)だ。ほかにもアマゾンでは同社の本が「万葉集」カテゴリー10位以内に5冊もランクインしている(7日時点)。関連書籍合わせて7万部という学術系書籍では異例ともいえる重版分を投入する。
他社からも多くの関連書が出ているなかで、なぜKADOKAWAの『万葉集』本が上位を占めたのか。そこには初期対応に懸けた明確なPR戦略があった。
注文数だけで3000冊が足りない!
『ビギナーズ』は新元号公表当日にはアマゾン書籍ランキング総合1位にまで伸長。角川ソフィア文庫の大林哲也編集長によると「当日にウェブ経由の注文数が通常の600倍。注文数だけで3000冊が足りない状態」だったという。
当初は『ビギナーズ』『新版 万葉集 一 現代語訳付き』を各8000部重版の予定だったが、あまりの反響の大きさに『ビギナーズ』を3万部、『新版』を2万部と上乗せした。『ビギナーズ』の3万部は学術教養文庫としては異例の数字だ。
万葉集は各社から出ているが、当然のことながら原典は共通しているため、内容で差別化できることはそれほど多くはない。どれだけ丁寧に注釈や現代語訳が書かれているか、解説者は誰か、読みやすいレイアウトか、手に取りやすい価格か、など細かく吟味して購入する人もそれほど多くはないだろう。
すると「どれだけ早くその本の情報を潜在的な読者に届けることができたか」が他社との差をつくった重要なポイントと言える。
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