広島カープ「壮絶すぎるチケット購入」の舞台裏 抽選券求めて飛び交う怒号、5万人超が殺到

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球場窓口での販売を先行させている限り、発売時期を分散させると、シーズン中にも同様の騒動が起きるので現実的ではない。しかし、インターネットでの先行販売に切り替えれば発売時期の分散は合理性を帯びる。

ほかの11球団は球団のWebサイト上のチケットサイトをメインの販売窓口にしているが、自前のチケットサイトを構築している球団ばかりではない。外からは自前のサイトのように見えても、プレイガイドに業務を委託し、システム投資を回避している球団もある。

カープが一括販売を始めたのは今から22年前の1997年。球場に閑古鳥が鳴き、球団としては少しでも早く、少しでも多くのチケットを売りたかった。その当時は、買える枚数にも、買える試合数にも上限を設ける理由がなかった。

来季の販売方法は「ゼロベースで検討」

当時からチケットを大量購入し続けてくれている地元の労働組合や団体に対する恩義もある。ほんの5~6年前まではチケットの販売に苦労していただけに、人気が水物であることへの警戒感もある。窓口で対面販売することで、購入者との会話で得られるものも大きかった。

だが、ここまで混乱が広がると、そうも言っていられないのか、「来季、どういう販売方法を採るかはゼロベースで検討する」(球団広報)という。チケットの高額転売対策について「12球団でも話し合っている」(同)というが、即効性のある対策を講じることは難しそうだ。

福山雅治やサザンオールスターズなど、大物ミュージシャンのライブではかなり厳格な本人チェックが行われているが、毎試合3万人以上が集まる野球場で同様のチェックを行うことは技術的に不可能だ。球団が需要に見合うチケット価格に設定しないから高額転売が起こるのだという指摘はよく耳にするが、球団が思い切った値上げに踏み切れば、それはそれで批判を浴びるだろう。

丸佳浩選手が抜けてもカープ人気は衰える気配がなく、チケット争奪戦は来季も続きそうだ。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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