キューバ、経済自由化に進む社会主義国の実情 私有財産を許可、4月に憲法改正案公布へ
「キューバは医療費、大学までの教育費、食料の配給といった生活に必要な出費がほぼすべて無料だ。大半の労働者は国の管理のもと公務員として働いてきたし、それは企業人もしかり。
だから、贅沢な暮らしを望まなければ誰もが人間らしい暮らしを手に入れることができる。それは生前のフィデル(カストロ)が私たちに与えてくれたものだ。
キューバ人は諸外国と比較しても決して経済的に豊かではないかもしれない。だが、培われた知的財産や歴史、徹底された教育制度により、自分たちの生き方を確立しているんだ。しかし、近年ではもう少し経済的によい暮らしをしたいという人たちが現れているのも現状だよ」
キューバ経済を考察するうえでアメリカとの関係は避けては通れない。
1959年に盟友チェ・ゲバラと共に革命を成功させた、フィデル・カストロが着手したのは農地改革だった。これは、大地主に集中していた農地を分配することが目的であったが、その過程の中でアメリカ企業を接収した。当然ながらアメリカ側からの反発の声は強く、当時のキューバの主産業であった砂糖の輸入を禁止するなどの制裁を与えた。
これを期にソ連と接近したキューバに対してアメリカは1961年に国交を断絶し、以降両国の関係は非常にセンシティブとなっている。オバマ政権時の2015年に相互に大使館を設置するなど国交正常化の動きが見られたが、トランプ政権に移って以降、原則として個人のキューバへの渡航を認めないなど再び硬化傾向にある(それでもキューバに観光に訪れるアメリカ人の数は多いのだが)。
まだまだ不便なところも多いキューバ
この影響は旅行者にとっても顕著だ。アメリカから今でも続く経済制裁の影響を随所で痛感することがある。例えばキューバ旅行では、基本的にクレジットカードは使用できないし、アメリカ資本のカードではキャッシングすら困難でもある。
また、ホテル予約などの際もアメリカ企業が運営するインターネットサイトの予約は現実的でないし、Appleストアでのアプリ購入もできず、SNSの利用も一定の制限がある。もっともフィデル・カストロの弟であるラウル・カストロの議長就任以降は、プリペイド携帯所持、ホテル宿泊の解禁など急速に旅行者にとっての環境は整いつつあることも明記しておく。
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