「ポケモンGO」ARイベント仕掛人が語る舞台裏

アナログとデジタルが交差する独特の世界観

川島:その技術を毛利庭園でも使いたかったんですけど、リアルタイムで使用するには、普通のスマートフォンだとまだ追いつけない。それで「オクルージョン」は諦めました。でも、何かしらポケモンを探し出す楽しさみたいなものは残せないかな、と。

それで「近寄ったらポケモンがそこにいると分かる」仕掛けをつくれないかと考え始めたんです。ポケモンがいる場所に人を近付けるためには、例えばそこから鳴き声がしたらどうだろう、と。そんな発想の流れで、今回は音が重要だと考えるようになりました。

数センチ単位で位置測定が可能な「Beacon」

馬場:概要はSkypeで伝えていたと思いますが、最初の顔合わせではどんな話がされたのでしょうか?

馬場鑑平(ばば かんぺい)/1976年大分県生まれ。株式会社バスキュール エクスペリエンスディレクター。広告、アトラクションイベント、教育、アートなど、さまざまな領域のインタラクティブコンテンツの企画・開発に携わる。「HILLS LIFE DAILY」のアートディレクターも務める(写真:HILLS LIFE DAILY)

川島:ポケモン社のみなさんとの最初のミーティングに、真鍋さんやライゾマの皆さんが来てくれたんです。真鍋さんたちはミーティング以前に、毛利庭園という会場について既にリサーチしてくれていた。

真鍋:今回のプロジェクトでは、体験者の顔の向きと、音のする方向の関係性を厳密に認識することが課題でした。

川島:そう。向かって左の植木の中にピカチュウがいるなら、最初は左の耳に装着したイヤフォンから音が聞こえてきて、その植木の方を向いたら、今度は正面から鳴き声が聞こえてきているように、イヤフォンから音がしないといけない。

真鍋:つまり、歩いている人の位置だけじゃなく、頭の向きも重要なんですよね。特に後ろにポケモンがいるときは、後ろから聞こえるようにしないといけない。でも、それを実現するためには一般的なGPSの位置認識システムの精度では足りないんです。

一般的なGPSが認識できるのは、5〜10m間隔のざっくりとした位置。今回はできれば1m以下の精度で位置を把握したかったので、RTK(リアルタイム・キネマティック)という高精度の位置測定システムを使おうかとも思いました。でも、毛利庭園は周囲にビルが多くて、衛星の情報が取れない場所もある。RTKが使えればプログラムとしては簡単でしたが、それができなかったので、Beacon(ビーコン)を使うことにしました。

Beacon はbluetooth信号を発信する発信機。実際に地面に接地し、位置情報を収集する。毛利庭園に設置するポイントのシミュレーション図(写真:HILLS LIFE DAILY)

真鍋:Beaconは数センチ単位で位置測定ができます。でも、とにかく細かく設置する必要があるんです。今回は100〜150個は使っていますし、設置コストもかかる。でも、正確性からこれを採用しました。

川島:真鍋さんやライゾマのリサーチチームは、日頃から音を活用した実験をいろいろとしている。仕事の有る無しにかかわらず。その中で、今回の毛利庭園という環境に適したものを選んでくれたんです。

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