「ポケモンGO」ARイベント仕掛人が語る舞台裏 アナログとデジタルが交差する独特の世界観

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川島:実は最初、ポケモンさんとミーティングした時に、ヘッドホンをどうしようか?という話になったんです。でも、周囲の音が聞こえないヘッドホンだと「VR」ですよねって真鍋さんが言ってくれて。

VRとARは世間では従兄弟のように思われているんですが、VRは現実を違った現実に置き換えるようなもの。何かを被って世の中を見ると、現実が置き換わっている。それに対してARは、現実にデジタル情報を重ねて、現実の魅力を引き出すことができるもの。音を使ったARの場合に、ヘッドホンで毛利庭園の音を聞こえなくしたらVRだっていうのは、まったくそのとおり。最初のミーティングの時から、さすが真鍋さんだなって思いながら聞いていました。

ミーティングでは手を動かす

川島:難航したのは、どうやって顔の向きを測定するかだったんですよね。

ヘッドホンにスマートフォンを装着したミーディングの様子。たった1時間の話し合いで、悩み続けてきたデバイス問題が次々と解決した(写真:HILLS LIFE DAILY)

馬場:Beaconで正確な位置情報は取れるようになったけれど、顔の向きはまた別問題だった、と?

川島:そう。それで、ライゾマチームに、2bit ISHIIくんというエンジニアがいて、その彼がプロトタイプを作ってくれたんです。ヘッドホンにセンサーをくっつけて、それで顔の向きや頭の向きを測ろうという感じのものを。

でも、例えばヘッドホンを首に掛けると頭の向きが不正確だし、ヘッドホンにセンサーをくっつけるという構造に限界がでてきた。そしたら真鍋さんがいきなり、「センサーじゃなくってスマホをそのまま使っちゃえばいいんじゃない?」と言って、ヘッドホンにテープでスマホをぐるぐる巻きにして、部屋の中をうろうろしだしたんですよ。

真鍋:はい、やりましたね(笑)。

川島:そしたら「これ、いけるじゃん」って。そこから「じゃあ、センサーを使わなくてもスマホだけでいけるね!」と突破口が見えて。このときは本当に短い時間のミーティングの中で真鍋さんがどんどん手を動かし始めて。しかも、アナログに。それで解決策を考える。そのプロセスに感動した。ちょっと、いや、すごく感銘を受けました。すげえなって。

馬場:いつもそうなんですか? 手を動かして考えるというのは。

真鍋:割とそうですね。ミーティングは、何かを論じるというより実験する場にもなります。

川島:スマホを、向きを測るためのセンサーとして使うことが決まったら、じゃあ、スマホはディスプレイにもなるよね、さらに音も出るよねって、次々答えが見えてきた。いっそのことヘッドホンじゃなくて集音器のようなものを使って、音のする方向へ集音器を向ければいいじゃないか、と。このミーティングでそこまで一気にたどり着いて。

馬場:すごいスピードですね。頭に付けたけど、頭よりは集音器をかざしたほうが正確に方向を定められますよね。

耳を塞がないので、周囲の音もキャッチできるイヤホン「ambie」。ベンチャーキャピタルのWiLとソニービデオ&サウンドプロダクツが立ち上げたスタートアップの第一弾プロダクト(写真は、このイベントでのコラボレーションがきっかけとなり、2018年11月に数量限定で発売されたモンスターボールカラーバージョン)

川島:そうなんですよ。それに、直感的に分かる。ヘッドホンから聞こえてくるのは、パラボラが向いてるほうの音なんだってことが、子どもでも理解できる。そうすると今度は、ヘッドホンにセンサーを付ける必要がないので動きが自由になる。

その結果、「ambie」というイヤーカフ式のイヤホンの選択肢が出てきた。このミーティングではヘッドホン選定まで行っているんですけど、ambieなら外の音も聞きながら、ARの音も聞くことができる。それが決め手になったんです。

馬場:この話し合いがいつ頃の話なんですか?

真鍋:9月20日でしたね。残り1カ月を切っていました。

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