「ポケモンGO」ARイベント仕掛人が語る舞台裏

アナログとデジタルが交差する独特の世界観

馬場:じゃあ、人の位置情報を収集した後に、音がする場所の位置関係も構築していくような、そういったシステムの原型になるような実験もやっていたんですか?

真鍋:ライゾマのスタジオの中ではやっていましたね。スタジオで位置や姿勢を認識するのはモーションキャプチャを使えばとても簡単で、そういったことをやっていたので実際のロケーションに移った時にどんなハードルがあるかもイメージしやすかったです。

やはり固有の場所で実装するとなると、いろいろな制約が出てくるんです。例えば、毛利庭園は車の騒音も川のせせらぎも、両方のノイズがある環境。耳を澄ますと複雑で面白い音が聞こえてくる場です。

この日、サンフランシスコから日本に出張中だった川島氏。真鍋氏とは過去にも数多くのプロジェクトを共にしており、言葉の端々に信頼感が滲み出ていた(写真:HILLS LIFE DAILY)

川島:この「耳を澄ます」とか「周囲の音を聞く」っていうのも、このプロジェクトではとても重要な意味があるんですよ。

ARっていうと、二次元バーコードを写すとテーブルの上に何かが現われるとか、そういったことをイメージする人が多い。もちろんそれもARなんですが、今回僕らがやりたかったのは、現実に何かしらの感覚を重ねて、現実の感じ方を変えること。

毛利庭園って六本木ヒルズの中にあるんですが、「行ったことあったっけ?」と言う人も多い場所なんです。ただ通り過ぎちゃうんですよ、意識していないと。

馬場:確かに。わざわざ毛利庭園に行ったりしたことがないし、そういう意味合いではちょっと記憶が薄い場所かもしれない。

「耳を澄ます」ことの重要性

川島:現代人はグーグルマップで検索して、現在地と目的地だけを認識しているというケースが多い。間に通る場所は記憶にも残らない。まったく気にしていない。でも、NianticはARを通して、もっと自分の身の回りにあるものの価値を再発見してほしいと思って活動している。

そのために「Ingress」だったり「Pokémon GO」だったりがあって、例えばポケストップやポータルという場所を作ることで、普段行かない場所に寄り道してもらったり。毛利庭園で耳を澄ますと聞こえる音も、そういうことと同じで、せせらぎや虫の声が聴こえて、そこから季節も感じられるということに気づいてもらいたい。真鍋さんが、横断歩道を待っている時に目を閉じるのと一緒なんですよね。

馬場:え? なんですかそれ? 

川島:真鍋さん、横断歩道を待っている間に目を閉じて、車の行き来する音に耳を澄ませたりするそうなんですよ。

真鍋:耳の訓練といいますか……(苦笑)。音だけで、信号が赤から青に変わったのが分かるのでトレーニングがてらやっています。人と車の音だけで、青になったことをいち早く察知する練習というか……。半分、趣味ですけど。

耳を澄ます行為って、音楽の仕事をしていると、楽器のバランスを取ったり、エフェクトをかけたり、DJをしている時もやっていることですし、なんだかんだあるんです。でも、日常生活の中で耳を澄ます機会は、都会だとほとんどないですよね。

川島:でも、都会でも耳を澄ますといろいろな発見がある。最近は、街の音なんてノイズでしかなくって、ノイズキャンセリングヘッドホンで周囲の音は一切聴かないみたいな状況があるけど、それってスマートフォンだけを覗き込んで、世界を見ていないのと同じというか。

でも実はそうじゃないっていうのを真鍋さんの横断歩道の話を聞いて思って、これを毛利庭園でやったらどんなふうになるんだろう?っていうのが最初の動機でもあるんです。

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