「ポケモンGO」ARイベント仕掛人が語る舞台裏

アナログとデジタルが交差する独特の世界観

川島:じゃあ、ロサンゼルスに会いに行きますよ!って、すぐに飛行機を予約したんですけど、その便が欠航になってしまって……。なので、真鍋さんが日本に戻ってからSkypeで概要を伝えて。「ぜひ、やりましょう」とお返事をもらって、動き始めたんです。

真鍋大度(まなべ だいと)/1976年東京生まれ。東京理科大学卒業後、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)を経て、2006年にRhizomatiksを共同設立。ARやドローンなど最新の技術を取り入れた実験的な作品で国際的に評価される。2015年よりRhizomatiksの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うRhizomatiks Researchを石橋素氏と共同主宰。DJとしても活動する(写真:HILLS LIFE DAILY)

馬場:ここでちょっと、「Pokémon GO AR庭園」ってどんなイベントだったのか説明しておきたいんですけど。六本木ヒルズに毛利庭園という日本庭園があるんです。テレビ朝日の前の庭園と言うと、分かりやすいかもしれない。

川島:そうですね。なかなか広くて、池もあったりします。

馬場:その庭に10匹のポケモンが隠れているという設定で、ポケモンキャッチャーに似たオリジナルの集音器とイヤフォンが渡されて、庭園を歩きながら集音器を使ってポケモンたちの鳴き声を収集していくんです。この鳴き声を集めるという発想が、もともとのポケモンGOにはなくて面白いですよね。期間中に数千人が参加したそうで、親子で楽しむ人も多かったと聞いています。

「音」が重要だと考えた理由は?

馬場:それで、話が少し戻りますけど、このプロジェクトに「音」が重要だと思ったのには、どんな理由があるんですか?

川島:技術的な話になっちゃうんですけど。毛利庭園にポケモンを出現させるとして、じゃあどんな風に姿が見えるべきかと考えたんです。ただ現れるだけのARだと現実世界の“前面”にピカチュウが現れることになる。

例えば、ピカチュウは植木の前に現れるけど、植木の“裏側”に隠れたりはしない。でもそれだと、今回のプロジェクトはちょっと面白くないな、と思ったんです。簡単に見つけられますからね。

馬場:なるほど。

川島:ピカチュウが現実世界の後ろ側に回り込む技術を「オクルージョン」と呼んで、僕の所属しているNianticではそれを研究しているんです。最近だとイギリスのスタートアップで、コンピュータビジョンと機械学習を専門にする「Matrix Mill」を買収して、さらに研究を進めています。

「オクルージョン」を取り入れるためには、何が手前にあって、何が奥にあるのかという現実世界の深度を正確に測る必要があるのですが、最新のiPhoneに搭載されている複眼カメラはともかく、一般的なカメラでは深度は認識できない。それを、マシンラーニングによる技術で確立しようとしたのがMatrix Millなんです。

「INNOVATION TOKYO 2018」(2018年10月12日~21日開催)のプログラムのひとつとして発表。『ARで変わる街の楽しみ方』をテーマに、六本木ヒルズとNianticが共催したイベントで、「Pokémon GO AR庭園」の他に、「Ingress」の世界観を体感できる「AR Roppongi × Ingress」など4つのプログラムが行われた(写真:HILLS LIFE DAILY)
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