「ポケモンGO」ARイベント仕掛人が語る舞台裏 アナログとデジタルが交差する独特の世界観
川島:今回は本当にタイミングが良かった。ちょうどその時期にライゾマさんが空いてるっていうのも奇跡的なことだったんですよ。
真鍋:スケジュールを詰め過ぎると、面白い案件がやって来たときに断らないといけなくなるので、意識的に空けて研究開発の時間を取っています。1カ月の半分ぐらい研究開発や自主制作のためにスケジュールを空けていることも、ライゾマのリサーチチームは結構あったりする。
馬場:ライゾマがどういう組織形態なのか正確に分かっていないところがあるんですが、確か同じくらいの時期に新宿御苑でもプロジェクトをやられてましたよね?
真鍋:『GYOEN NIGHT ART WALK 新宿御苑 夜歩』ですね。あれは僕らとは別のアーキテクチャーチームの仕事なんです。ライゾマの中には「Research」「Architecture」「Design」という3つのチームがあって、僕はリサーチチームです。
川島:ちょうど「Pokémon GO AR庭園」の直後にファションブランドのANREALAGEのショーもありましたよね。音楽はサカナクションで、演出がライゾマで。
真鍋:ありましたね。10月19日の開催だったから、ポケモンのイベントの1週間後。でも、やる内容が決まったのが1週間前だったので、そこから準備しました。
馬場:え、1週間で何ができるんですか……!?
川島:そうとは思えない仕上がりでしたけどね。
既存の土台を調整し、システムを構築
真鍋:ゼロから作るというよりも、今、研究している技術をカスタマイズするというか。1週間で開発してるわけではないんですよ。リサーチで研究してきたことを、そのブランドに合わせて最終調整するというか。研究開発でネタを常にためているからできることですね。
馬場:それで言うと、少し話を遡って聞きたいことがあるんですが、さっき真鍋さんがミーティングの時にヘッドホンにスマートフォンをくっつけていたじゃないですか。あのスマートフォンの中では何を起動させているんですか? 何かこのためのプログラムをその場でパッと書いているんですか? それとも何か既存のシステムを使っているとか?
真鍋:取りあえずOSC(シンセサイザーやコンピュータなどの機器において、音楽演奏データをネットワーク経由でリアルタイムに共有するための通信手順)でジャイロ(物体の角度などを検出する計測器)などの値を送れるソフトをその場で買ったって感じですね。それでOSCでMacに送って……。
馬場:じゃあ、Mac経由で作業して。
真鍋:そうですね。そのときはMacで作業して、それをまたiPhoneに送って。iPhoneにOSCを送ると、その音を定位させられるし、どこの位置から音が出るかをコントロールできるんです。そういったテスト用のソフトはもう作っていたので。
馬場:すでに事前に作ってたんですか! なるほど、そういう資産があるんですね。
真鍋:はい、なので元々あるものにジャイロの値を組み込んだ感じ。もちろん、1、2時間あればすべての工程を含めたソフトも作れるんでしょうけど、その時はすぐ試したかったので、100円のアプリをとりあえずインストールしました。