「夢に向かって頑張る」が科学的にアウトな理由 UCLA医学部教授が教える「意志力不要」の技術

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はしごのように「目標を小さく刻む力」が効果的な理由はいくつもあるが、最もシンプルなのは、段階的に目標を達成しやすくすることだ。例えばフルマラソンを走るとする。数カ月前から開始する日々の練習は、小さなステップに例えられる。

マラソンに初挑戦した私の友人は、一切練習をしなかった。根性さえあれば、練習なしでも42.195キロを完走できると考えたのだ。友人にとって、フルマラソンの完走は「目標」ではなく「夢」だった。レース当日、序盤こそ調子がよかったが、30キロ付近で体力が尽きて失速し、途中棄権した。「もうマラソンはこりごりだ、死ぬまで走らない」と言っている。

練習せずに成功する人もいる。だが失敗したら、もう二度とマラソンなど走りたいと思わなくなるだろう。もし友人がぶっつけ本番方式ではなく、目標を小さく刻んでいたら、「無理なく走れる距離を5キロずつ増やす」といった短期目標を設定し、その実現のために「スムーズに呼吸する」といったステップを達成しながら、徐々に走力を高められたはずだ。走る距離も、5キロ、10キロ、15キロ、20キロと延ばしていけただろう。

人は近い将来の小さな報酬に惹かれやすい

神経科学でも、「目標を小さく刻む力」が継続力を高めることを、脳が報酬に反応する仕組みに基づいて説明している。ある種の行動(「チョコレートを食べる」「お金を稼ぐ」「セックスをする」など)によって、脳内から快感を誘発する脳内化学物質であるドーパミンが分泌されると、人は再びそれを味わおうとして行動を繰り返すようになるのだ。興味深いのは、脳が報酬を絶対的なものではなく、相対的なものとして捉えていることだ。

具体的に説明しよう。「ドーパミンの分泌量は、報酬そのものの大きさではなく、期待値に対する大きさに応じて増える」ことを明らかにした神経科学の研究がある。被験者の脳内を調べたところ、ドーパミンは「小~中規模の報酬を期待し、中規模の報酬を得たとき」には分泌されたが、「中~大規模な報酬を期待し、中規模の報酬を得たとき」には分泌されていなかった。

例えば、ある男性が1~5ドルが手に入ると期待しているときに5ドルを得ればドーパミンが分泌されるが、5~25ドルが手に入ることを期待していたときに5ドルを得ても分泌されない。どちらの場合も5ドルを得たが、期待値が違った。報酬が期待値を上回ると脳からドーパミンが分泌され、下回ると分泌されないのだ。

つまり、人の気分は実際に達成したことではなく、達成しようとしていたことに応じて変わる。例えば、新しくオープンしたスポーツジムの営業担当者が、「月末までに新規会員100人」という目標を立てたとする。

この時点ではこの数字は「夢」かもしれない。だが、「週末までに10人」という短期目標を立ててそれを実現すれば、「月末までに100人」と同じくらいの達成感を味わえる。

翌週に「週末までに20人」という短期目標を立ててそれを実現すれば、ドーパミンが分泌されて気分がよくなり、さらに多くの会員を獲得し続けたいと思うようになる。「年末までに1000人」という大きな夢を持つだけの場合よりも、1日、1週間といった短期間のサイクルでドーパミンの快感を味わえる。やがては、夢を実現できる確率も高まるのだ。

ショーン・ヤング カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部教授

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UCLAデジタル行動センター(CDB)およびカリフォルニア大学予測技術研究所(UCIPT)創設者兼エグゼクティブ・ディレクター。その活動は、ニューヨークタイムス紙、ワシントンポスト紙、ハフィントン・ポスト、サイエンス誌、NPR、Yahooファイナンス、TechCrunch、マッシャブル、CNN、CBSニュースなどの大手メディアで紹介された。スタンフォード大学心理学博士、ヘルスサービスリサーチ修士。南カリフォルニア在住。

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