平成のカフェ「コンビニが2割」に台頭した事情 喫茶店減ったのにコーヒー好きが増えた時代

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他の業界から「コンビニコーヒー」が参入し、瞬く間に強豪となったのも特徴だ。2013年にセブン-イレブン(セブン)が仕掛けた「セブンカフェ」で火がつき、1杯100円(レギュラーサイズ)のコンビニコーヒーが一大勢力となった。「2018年度で11億杯を見込む」(同社)という。全体の市場は推計で2000億円を超え、前述の喫茶市場の2割を占めた。

セブンのコーヒーを長年取材した1人に、狹間寛氏がいる。業界紙「帝国飲食料新聞」の元編集部長で、現在は経営情報誌『珈琲と文化』の編集を担当している。少し解説してもらおう。

「セブンは、十数年前から抽出コーヒーシステムの開発に取り組み、トライ&エラーを重ねました。例えば『バリスターズカフェ』というエスプレッソタイプのコーヒーも出しましたが伸び悩み、ドリップ式に変えて大成功を収めたのです。セブンカフェのブレンドコーヒーはアラビカ種100%ですが、高級豆ではなくスタンダードクラスでしょう」

「原料豆は系列の三井物産から調達し、焙煎は味の素ゼネラルフーヅ(現味の素AGF)、専用コーヒーマシンは自動販売機製造最大手の子会社(旧富士電機冷機)を傘下に持つ富士電機と共同で開発した。2017年には大幅刷新するなど、品質改良を続けています」(同)

高級豆ではないが、「おいしい」と感じる人が多いのは、「豆の回転が速く、『3たて』(煎りたて・挽きたて・淹れたて)を実現したから」と狹間氏は指摘する。急拡大した反動の課題もあるが、今やコンビニコーヒーは、100円コーヒーの「ディファクトスタンダード(事実上の標準)」になった――と筆者は思う。

「コーヒーが好き」という女性も増えた

現在に至る「カフェブーム」が起きたのは、2000年(平成12)年頃からだ。「東京都内のおしゃれ感のある個性的な店を、マガジンハウス系の雑誌や女性誌が積極的に取り上げて “東京カフェブーム”が起きたのが、ブレイクしたきっかけ」(業界誌の編集者)という。

この頃から「喫茶店」に代わる「カフェ」という言葉が一般的になった。厳密には2つの意味合いに大差はないが、喫茶店という言葉には、ひと時代前の雰囲気も漂い、「昭和レトロ」などの枕詞がつく場合も多い。

平成時代のカフェやコーヒーを語る場合、女性が人気を牽引した事実は指摘しておきたい。カフェブームもスタバ人気も女性が主導した。筆者の取材結果でも「コーヒー好き」の女性は間違いなく増えている。

昭和時代後期から平成の初期、女性は総じてコーヒーよりも紅茶を好んだ。だからこそ「ティーサロン」も多かったが、現在その手の店は減った。この間の女性の社会進出もあり、筆者の肌感覚では、女性の好みが「紅茶」→「ミルク系コーヒー」(シアトル系カフェ)→「ブラックコーヒー」に変わっていった感がある。

その結果、メニュー開発も進んだ。かつて「昭和の男性客中心の時代、ブレンド、アメリカン、アイスコーヒーの3メニューで全体注文の6割がまかなえた」(首都圏中堅チェーン店の経営者)という話も聞いてきた。そうした時代にはメニュー開発も求められなかった。現在のカフェで提供される「ラテアート」や「デザインカプチーノ」も、昔だったら支持されたのだろうか。

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