平成のカフェ「コンビニが2割」に台頭した事情 喫茶店減ったのにコーヒー好きが増えた時代
こうしたラテアートなどをつくる人は「バリスタ」と呼ばれて、若者が好む職種の1つとなった。数年経験を積んだ後、独立開業する人も多い。それにはネット社会の進展で、コーヒー関連の情報が安価に入手できるようになり、「十数年修業して独立」しなくてもよくなったからだ。成功するかどうかは別にして、若者が参入しやすい業界は活性化する。
良質なコーヒー豆をつくる、産地の取り組みなど生産方法が進化し、浅煎りや中深煎り・深煎りなど豆の特性にあった焙煎の研究も進んだ。抽出器具も進化した。意欲のあるコーヒー職人が腕を振るいやすい環境も整った。日本トップレベルのバリスタを取材して感じるのが「昔はコーヒーにそれほど興味がなかった」という人が多いこと。入社して配属された結果、のめりこんだり、一時休養中に奥深さに目覚めたり、理由はさまざまだ。
「バリスタトレーナー」という職種も生まれた。その第一人者が阪本義治氏(44歳)で、世界王者をはじめ日本有数のバリスタを育成して大会に送り出し、好成績を上げる。現在も20代から40代までのバリスタが多数指導を仰ぐ。その功績が認められ、「外食アワード2017」を中間流通・外食支援事業者部門で受賞した。これも平成ならではの動きだ。
コーヒーを革新させてこそ「カフェ」
さまざまな動きを駆け足で紹介したが、今でも「カフェを開業したい」人は多い。ここ数年取材した中には、前職が製薬会社の研究員や銀行員だった人もいる。だが、前述したように個人店が減り、大手が闊歩する時代だ。人気店にするには、どう訴求すればよいか。
筆者はカフェの機能を「基本性能」と「付加価値」という言葉で説明してきた。基本性能とは、飲食の提供・場所の提供で、付加価値は、その店ならではの独自性だ。
まず指摘したいのは、主力商品であるコーヒーを多く販売しないと経営が安定しないこと。現在人気の個人店、たとえば「丸山珈琲」(本社は長野県)も「サザコーヒー」(同茨城県)も、「猿田彦珈琲」(同東京都)も、コーヒー豆販売が主力。「豆売り」で実績を出すのが目指す道だ。イノベーションが激しいので、現在人気の豆や抽出方法が、5年後の潮流になる保証はない。これらの店が、バリスタ育成に力を注ぐのは「潮流を知る」面もある。
そこまで高い目標を持たなくても、絶えず「店の魅力」を見直すことは大切だ。その魅力は飲食の味(基本性能)に加えて、店主やスタッフの接客、居心地、清潔性などだ。
温故知新の視点でいえば、「付加価値」に“飛び地の魅力”で訴求した店は長続きしない。「旅行情報が得られる」「動物と遊べる」という店は興味深いが、何十年も続きにくいのだ。総じて20年、30年続く個人店は、コーヒーへの探求心があり、他の飲食もおいしい。基本性能を掘り下げた付加価値といえる。
こうして考えると、「カフェ」や「コーヒー」には、ビジネス人生のステージを生き抜くためのヒントがあることに気づく。だからこそ興味を持つ人が多いのだろう。
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