港区に残る「81年前の名建築」の意外な活用法 「港区立郷土歴史館」を360度カメラで撮影

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建物2階の中央ホール(編集部撮影)

正面玄関から入ったところが、建物2階の中央ホールになっていて、2層吹き抜けの広々とした空間に迎えられる。この2階、3階が来客を迎える応接スペースとなっていて、中央ホールや3階の院長室、次長室などは、歴史的建築として完全に保存する方向で改修されている。

しかし、この建物は展示施設となっているので、このたびの保存改修では、館内をABCの3ランクに分けて、Aは完全に保存、Bは保存しながらも活用のために一部改修、Cは完全に改修というように分けられて整備された。

国立公衆衛生院とはなにか

2階から4階には港区の歴史や郷土に関しての展示室がある。そのなかでも2階の「コミュニケーションルーム」は旧図書閲覧室だった部屋を改修し、クジラの骨格標本やペンギンの剥製などが展示してあり、クラシックな雰囲気が魅力になっている。

そもそも国立公衆衛生院とは、どんな施設だったのだろうか。

まだチフスやコレラなどの伝染病の多かった昭和初期、当時ようやく普及し始めた「公衆衛生」という概念を広めるための教育施設として開設され、全国の保健士たちがここで、伝染病予防や労働環境などについての研修を受けるために設けられた。館内の最上階6階は研修生たちのための宿泊女子寮になっていて、その一部は現在も見学できる。

4階、5階は公衆衛生に関する授業を行う教室や実験室の並んでいる実用的なつくり。なかでも4階の大講堂は340席の階段状の部屋で、いすのクッションと天井板以外は創建時の部材がそのまま残されており、歴史的空間としても貴重なものだ。

4階の大講堂(編集部撮影)
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