「GAFAの躍進著しいアメリカ経済の繁栄に比べ、1990年代初めにバブルが崩壊してから日本経済は低迷が続いている」、という声をよく聞く。だが、はたしてアメリカ経済は日本が目指すべき手本なのだろうか。
国際比較によく使われる米ドル建ての名目GDP(国内総生産)でみると、日本の経済規模は1995年にはアメリカの7割程度だったが、2017年には3割を大きく下回って約4分の1程度となっている。1人当たりGDPで見ても、1995年頃にはアメリカを大きく上回っていたが、近年ではアメリカの3分の2程度の水準となっている。1人当たりGDPは主要国の中での順位が20位と、フランスや英国の後塵を拝していることも、日本経済の低迷を表すものとされる。
日本のGDPを米ドル建てで見るために使う為替レートは非常に変動が大きい。2012年には1ドル=70円台だったが、2015年には120円台半ばまで下落し、100円近くに上昇した後、現在は112円近くで推移している。
大幅な円高だった2012年は、米ドル建ての日本の1人当たりGDPは米国の約95%だったが、円高を是正すべしという声があちこちから上がるありさまで、とてもよい経済状態だったとはいえない。残念ながら米ドルに換算するのは国際比較をするうえで最善の方法とはいいがたい。
評価の分かれる安定化政策
そこで、それぞれの自国通貨建てで1990年を基準にこれまでの変化を比較してみよう。この間にアメリカは実質GDPが約2倍に増えたのに、日本は3割程度増えただけだ。これを名目GDPで比較すると、物価が上昇を続けているアメリカの拡大に比べて、物価が上昇しない日本の伸びの低さはさらに著しいはずで、日本の経済成長率が低いことは明らかだ。
各国政府・中央銀行の行う経済政策は、高い経済成長率を実現することだけでなく、景気変動の幅を小さくして不況期に大量の失業者が発生することを防止するという目的も持っている。2つの目的が同時に実現できればよいのだが、一方を実現するためには他方を犠牲にせざるを得ないというジレンマが生じることもある。
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