2019年は、公的年金の財政検証が5年に1度行われる年にあたる。第1次安倍晋三内閣では、年金記録問題に翻弄され、2007年の参議院選挙での与党敗北の遠因の1つになった。それだけに、安倍内閣として年金問題は、避けて通りたいイシューかもしれない。しかし、年金の財政検証は、5年に1度行わなければならないものだから、逃げることはできない。
年金の財政検証は、わが国の公的年金のおおむね100年間にわたる収支見通しを作成し、年金財政の健全性を検証するものである。要するに、わが国の公的年金が「100年安心」かどうかを検証することである。
今夏には、参議院選挙がある。財政検証を参議院選挙の後にすれば、年金は選挙時の争点にならずに済ませられるかもしれない。ところが、過去の財政検証は、夏までには結果を公表していたのだ。今の仕組みが定着して最初の財政検証は、2009年2月23日に結果を公表。5年前の2014年の財政検証の結果は、2014年6月3日に公表されている。今年の参議院選挙が予定されている7月よりも前である。もし、現政権が、都合が悪いとして検証結果の公表を参議院選挙の後にすれば、国民や野党から「安倍政権は年金問題から逃げている」と批判の声が上がるだろうし、わざわざ公表を遅らせれば、「年金の財政検証は、政権にとって不都合なほどよくない結果になっている」と疑心暗鬼が広がるかもしれない。
「100年安心」を示せれば安心できるが・・・
相当な納得がいく理由でもない限り、今年の財政検証の結果は、参議院選挙の前に出さないと、むしろ政権与党にとって評判を悪くすることになろう。
では、逆にみて、年金の財政検証の結果は国民を安心させられる内容となって、参議院選挙の前に堂々と公表して、与党が選挙を有利に進めるという可能性はあるだろうか。どうやら、さまざまな客観的情報を合わせると、参議院選挙の前に堂々と公表して政権与党が有利になるような財政検証の結果は、出せなさそうな状況である。
それはなぜか。その根拠を一つ一つ示していこう。
まず、国民を安心させられる検証結果とは、どのようなものか。年金の財政検証の結果、俗にいう「100年安心」であることが示せれば、確かに安心させられる。「100年安心」という言葉に当てはまる状況とは、専門的に考えれば、将来にわたって安定して所得代替率が50%を維持できるような給付が出せて、かつ100年後でも年金積立金は枯渇しない状況といえよう。所得代替率とは、受給開始時の年金額がその時点の現役世代の所得に対してどの程度の割合かを示すもので、わが国での計算では夫が40年間平均賃金で働き、妻が無収入の専業主婦である夫婦が2人で受け取る年金額を前提としている(この定義の是非については不問とする)。
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