ベーシックインカムが解決策にならない理由 費用対効果を負の所得税や生活保護と比較

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ベーシックインカムは本当に有用なのか(写真:Elnur / PIXTA)

AI(人工知能)が発達すると、多くの仕事を機械が行うようになり大量の失業者が生まれるおそれがある。そのとき、ベーシックインカム(BI)で最低限の生活が維持できれば安心なので、その実現を目指そうという声をよく聞く。しかし、BIは実現するためのコストが非常に高く、それほどの規模の増税を行うことはまず無理だろう。

ベーシックインカムは、無条件ですべての人に一定金額の給付を行う制度だ。単純明快で魅力的に見えるが、実行するために必要となる資金額が膨大であるという高い壁がある。たとえば、国民1人ひとりに、たったの毎月1万円支給するだけで、2018年10月現在の日本の人口1億2644万人×年間12万円≒15兆1728万円で、年15兆円以上の財源が必要だ。まともな生活ができる水準の所得を保障しようとすれば、100兆円近い財源が必要となる。

大規模な増税で合意ができるのか

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2019年度に予定されている消費税率引き上げでは、政府は消費税率1%当たり2.8兆円の増収という数字を使っている。現在8%の消費税率を10%に引き上げることは、単純計算で5.6兆円の増税になるが、今回は食料品への軽減税率適用で1兆円程度減収になるので、増税規模は4.6兆円という計算だ。この規模の増税ですら反対の声は多く、いわんや数十兆円という規模の増税についての国民的合意を作り上げることは、まずもって無理だろう。

2018年度の国の一般会計の当初予算が総額で97.7兆円、国債費や地方交付税を除いた一般歳出は58.8兆円にすぎず、そのうち33兆円は社会保障費であることをみれば、歳出削減を行って財源を念出するということが無理なことは明白だ。しかも、33.7兆円もの国債を発行して財源を賄っているのだから、削減できるような支出があるのなら、まずは財政赤字を減らすことに使うべきだろう。

公共事業を減らしてさまざまな政策に使うべきだという主張はよく聞かれるが、一般会計の公共事業は約6兆円でしかなく、2017年度の国と地方を合わせた公共事業(公的固定資本形成)の規模は27.8兆円にすぎない。必要性が疑問な公共事業はあるが、逆に老朽化しているにもかかわらず十分な維持・更新投資が行われていないものも多い。

緊縮財政を迫られた国で補修が不十分な橋が崩落したという事故などのニュースも聞かれるように、公共事業費の大規模な削減が事故や災害に結びつくおそれも大きい。捻出できる資金があったとしても大した金額にはならないはずだ。

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