ベーシックインカムが解決策にならない理由

費用対効果を負の所得税や生活保護と比較

1960年代にミルトン・フリードマンが支持して有名になった負の所得税を使うと、ベーシックインカムと同じことをもっと小さな費用で実現することが可能だ。負の所得税は、一定の所得以下の人には所得税をマイナスにする、つまり、給付を行う、というものだ。

簡単な例を図で示してみよう。年収にかかわらず年100万円のベーシックインカムを給付する場合を考える(図のオレンジの枠部分)。ベーシックインカムを超える所得にたとえば25%の所得税をかけるとすると、可処分所得は赤い線のようになる。当初所得がゼロの人は可処分所得はベーシックインカムの100万円だけで、当初所得が増えるにしたがって、可処分所得は当初所得の増加よりも緩やかに増加する。

個人が払う所得税は黄緑色の線で表されているが、年収400万円でベーシックインカムとして100万円受け取る一方で100万円の税を支払うので、差し引きの給付がゼロになる。負の所得税の場合は、水色の線のように年収400万円以下の人たちは所得税がマイナスとなって給付を受け、年収400万円でちょうど所得税がゼロになる。負の所得税では税を支払うのは年収400万円以上の人たちだけであり、ベーシックインカムの場合では年収400万円以上では税額がベーシックインカムを上回って差し引きで負担超になっていることに対応している。

実現可能性は負の所得税のほうがまだ高い

同じ当初所得であれば、どちらの制度でも同じ可処分所得になるが、ベーシックインカムでは全員が100万円を受け取ると同時に、所得のある人全員に税がかかるので、給付も多くなるが税負担の合計も多い。負の所得税の場合は給付を受ける(所得税がマイナスとなる)のは年収400万円未満の層で、年収400万円超の層には税負担が発生する。年収1000万円の場合、負の所得税では税負担は150万円だが、ベーシックインカムでは250万円で、受け取る100万円を差し引くと純負担は150万円となる。

「当初所得が同じであれば、同じ可処分所得になる」というのなら、ベーシックインカムと負の所得税のどちらの制度も納税者の反応が同じはずだと考えるのは楽観的すぎる。給付を受けることにはほとんどの人が賛成するとしても、大幅な負担増に強い抵抗があることは間違いない。誰もが他人の負担でより多くの給付を受けたいと考えて争うので、国民的な合意の形成は困難だ。大規模増税への強い抵抗を考えれば、ベーシックインカムよりも負の所得税のほうがまだ実現の可能性が高い。

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