「平成」は間もなく終わりを迎えるが、平成がはじまった頃には、世界中の国々が欧米型の資本主義に移行していくという楽観的な見方が多かった。
第2次世界大戦後、当初は政府の計画に従って経済が運営される社会主義諸国は良好な発展を遂げた。科学技術の点でもソビエト連邦が人工衛星や有人宇宙飛行を世界で初めて成功させるなどして、西側資本主義国に大きな衝撃を与えた。しかし、やがて経済は停滞して行き詰まり、ソ連は崩壊し中国が改革開放路線に転換したことで、資本主義対社会(共産)主義というイデオロギーの対立は解消された。
「なぜ欧米だけが経済発展を遂げることができ、多くの国々が貧困から抜け出せないのか」ということをテーマにした本が多数刊行されたが、筆者が読んだ本のほとんどが、民主主義や自由、政府に侵害されない所有権などに基く欧米型の社会制度でなければ長期的に経済発展を続けることはできないという主旨であった。
世界金融危機で揺らいだ欧米型資本主義への信頼
しかし、リーマンショックで米国経済が混乱し、続いて欧州で政府債務危機が起こると、政府の関与を最小限にして民間企業の自由な活動に任せるという欧米型資本主義への信頼は大きく揺らぐ。
急速な経済成長を遂げた中国は、習近平主席が誕生すると共産党による民間経済活動のコントロールを強化する方向に進み始めた。
現在の欧米を中心とする諸国と中国やロシアなどとの対立は、自由や民主主義、人権問題やナショナリズムなどさまざまな要素がからんでいるが、経済の視点からは国家資本主義対欧米型資本主義という資本主義同志の対立の構図と見ることができる。欧米型資本主義は民間企業の自由な経済活動を基本としているが、国家資本主義は政府や共産党が民間の経済活動を方向づけることが基本となっており、中国やロシアなどが採用している。
欧米型資本主義では、企業や個人の競争は経済発展の原動力の一つだと考える。規制など政府の関与は競争を阻害するとみなされることが多く、成長戦略を問えば、ほとんど反射的に「規制緩和」という答えが返ってくることが多い。しかし、規制を緩和しさえすれば経済活動が活発になり経済成長率が高まるというものではなく、逆に規制や政府の関与が新しい技術や仕組みの普及を促進するということもある。
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