IMF(国際通貨基金)の推計では購買力平価ベースでみると、すでに中国はアメリカを抜いて世界一の経済大国となっている。市場の為替レートを使ったIMFの予測によると2023年になってもまだ米中の経済規模にはかなりの格差があって、規模逆転は視野に入っていない。だが、筆者を含めて遠からず中国はアメリカを抜いて世界一の経済大国になるだろうと考えているエコノミストも多い。
これは、中国は人口がアメリカの4倍程度もあるためだ。アメリカが中国に経済規模で抜かれないためには、1人当たりの生産額を中国の4倍以上に保つ必要があり、これはなかなか厳しい条件だ。中国が今後、相当大きな政策的な間違いを犯さない限り(注2)、いつかは追い抜かれる可能性が高いだろう。
少なくとも、中国は容易にアメリカの圧力に屈して政府による経済への関与を止めることはないとみられる。一方、なぜ欧米だけが経済発展を遂げられたのかを論じた数々の本が正しければ、いずれは国家資本主義を採用した国々の経済は停滞してしまうはずだ。中国が中進国の罠を抜け出せず、どこかで成長が止まってしまい、中国経済の規模がアメリカ経済を凌駕して世界一の経済大国になるということは起きないという見方も根強くある。
1~99%の間の最適解を議論すべき
しかし、日本も含めた先進諸国経済が停滞する中で、国家資本主義を掲げる国々の経済的発展を脅威とする論調は強まっている。これは、国家主導で技術開発や産業の育成を行う中国と対抗していくのに、自国の政府が何もせずに民間企業の自由な競争に任せるだけではうまくいかなくなると考える人が増えているからだろう。
政府が経済活動にどこまで介入するかは、社会主義経済の100%から自由放任の0%まで幅があるが、市場の失敗が存在することを考えれば最適なレベルは1~99%のどこかになるはずだ。政府が民間の経済活動に介入すべきか、すべきでないのかという問題設定は誤りだ。どのような場合に介入すべきで、どのような場合には介入すべきでないのか、どのような形で介入するのが適切なのかが議論すべき問題ではないだろうか。
(注2)多くの書籍は、中国経済が著しい停滞に陥ったのは1950年代末ころから行われた大躍進政策の失敗が大きかったと指摘している。
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