産学官の連携組織である「キャッシュレス推進協議会」は、3月末に「コード決済に関する統一技術仕様ガイドライン」を発表し、QRコードを用いた決済の技術的統一仕様を発表した。
日本ではQRコード決済は、PayPay、d払い、楽天ペイ、LINEペイなどを筆頭に、Amazon Pay、au Pay、ゆうちょPay、Pay IDなど、多数の決済システムが乱立していて、店によって使える決済システムが異なる。現状では、システムによってQRコードの仕様が異なっているため、誤請求が発生する危険性があることも指摘されていた。QRコードを使った決済の規格が統一されることで、日本での普及が促進されると考えられ、大いに歓迎したい。
日本でキャッシュレス決済が普及しないのは、日本の消費者は現金払いを好むからだといわれることも多い。しかし、日本では比較的早い時期から公衆電話や鉄道のプリペイドカードなど、個別分野ごとにキャッシュレス化の動きがあったし、電気・ガス・水道料金やNHKの受信料などの公共料金や固定資産税、新聞代などの定期的な支払いは銀行口座からの自動引き落としも利用されてきた。
少額の支払いには電子マネーやスーパーのポイントの利用が増えている。1円玉、10円玉といった少額硬貨の利用は減って流通残高の減少が続いている。日本の消費者は便利なものであれば積極的に受け入れており、普及が進まないのは、現金決済を好むといった非合理的な理由が原因ではないだろう。
消費者にとって政府介入が有効なケース
スマートフォンや携帯電話を使ったモバイル決済は、先進国よりも新興国や途上国で急速に広がるケースが目立つ。政府主導で普及が図られた国もあるが、先進国では既存の決済サービスが充実しているため、よほど優れたものでないと消費者も店側も利用するメリットを感じられないことも、新しい決済手段の広がりにくい、大きな理由だ。
決済手段は、「利用者数が多ければ多いほど個々の利用者にとっての利便性が高くなる」(ネットワーク外部性)という性質があり、多数の決済手段が競争するよりも、少数の決済方法に多くの利用者がまとまるほうが、消費者にとっても販売店にとっても望ましい。
仕組みが乱立している現状では、ほとんどの店は一部の決済システムにしか対応できないので、1枚のカードやスマートフォンのアプリ1つでどこでも支払いができるというわけにはいかない。どこでも使えるという利便性の面でキャッシュレス決済よりも現金のほうが優れていることも日本で消費者が現金の利用を止められない理由だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら