貴之は、私に言った。
「実は2年間お付き合いしてきた中で、これが初めての大きなけんかだったんです。私が向こうの言ってくることにすべて折れてきましたから。
ただ私にも、従えないことがある。今回のようにこちらの意思表示をして、こんな言われようなら、この結婚自体が間違っているのではないかと。結婚して彼女やお母さんの前でいつも自分の意見を押し殺して生活しないといけないのなら、窮屈で息苦しくなりますよ」
婚約中にけんかをしないカップルはいない
結婚後の住居をどこにするかでもめるのは、婚約中のカップル間でよくあることだ。これまで私が送り出してきた成婚カップルたちの4大もめ事は、「住居」「金銭感覚の違い」「親の問題」「性の問題」だろう。
これまで違った環境で育ち、自分の生活スタイルを築いてきた他人同士が一緒の生活を始めようとすれば、お互いに譲れること、譲れないことが出てきて当然なのだ。
私は、貴之にこれまで婚約中のカップルがもめてきた、いくつかの事例を話した。
36歳女性と40歳男性が、やはり新居をどこにするかでもめたケース。このカップルは一戸建ての購入を検討していたのだが、物件を探していた場所が彼女の実家の近くだったために、男性の母親が烈火のごとく怒り出した。
「あなたは、婿に行くのか!」
女性にしてみたら2人の仕事場への通勤にも便利。子どもができたら実家に育児のサポートをしてもらえるから、安心して仕事が続けられる。彼もそれを了承していたはずだった。ところが、彼の母親が反対し出してから購入を渋り出した。
「私よりも、お義母さんの意見を尊重するの?」
そこで、婚約を解消する、しないの大げんかが勃発したのだが、最終的に彼が家の購入を決断したことで、丸く収まった。
もう1つは、住居の問題で破談になったケース。
都内で生まれ育った34歳女性が、都内で1人暮らしをしていた42歳男性と婚約をした。2人の職場は都内の中心地にあったのだが、男性の実家は千葉県の北部にあり、東京駅まで電車で1時間半かかる地域だった。
「結婚後の新居は、実家の近くに一戸建てを建てたい」
そう言い出した男性に、女性は同意できなかった。彼女は運転免許も持っておらず、車を足代わりにしないと生活できないような土地には行きたくなかったからだ。しかし、男性は実家の近くを新居にすると押し通したので、最終的に婚約が破談となった。
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