3つめは、ICのスケールメリットを享受できることだ。ICは多くの会員が利用することで、サービス・商品を格安で仕入れている。たとえば、1泊10万円のホテルのスイートルームに4万円の宿泊料+1万円のICへの手数料=合計5万円で宿泊することができたりする。数あるサービス・商品の中から自分の好きな物を選べるのもうれしい。
ちなみに、日本国内でICで人気のサービス・商品は、ディズニーランド周辺や横浜エリアのホテルや旅館での宿泊、スポーツクラブ・フィットネスクラブ、居酒屋から高級フレンチレストランまで飲食店の利用、映画館での鑑賞などが人気。主に、従業員数1000人以上の比較的規模の大きな企業が利用しているという。
一方で、台湾ではインセンティブ事業だけでなく、日本で行っている事業をフルラインナップで展開する。共同でChungwa Benefit Oneを設立する中華電信は連結で3万5000人ほどの従業員を抱える巨大グループ企業。グループ内だけでもすでに多くの潜在会員が存在し、さらに台湾では企業の営業利益のうち一定の割合を福利厚生に回さないといけないという制度があるため市場は大きい。よって、約16億円の売り上げが立っている状態から事業を開始する。これにおいて、中華電信と長年の付き合いがあった伊藤忠商事の功績は非常に大きい。
「日本発・海外で成功したサービス業の先行事例になる」
BOAがアジアに進出し、そのアジア統括会社をシンガポールに構えた背景には、前述のとおりアジアの労働市場における流動性の高さがある。企業にとってはリテンション、つまり企業にとって必要な人材の維持・確保が難しいということだ。白石氏はその背景について、高度成長による人材の売り手市場、そして中華圏で育った民族ならではの移動しやすい志向があるのではと分析する。
さらに背景としてもうひとつ。アジアに進出する企業の多くが、シンガポールにアジア地域のリージョナルヘッドクォーターを配置しており、人事にかかわる管理部門が集中していることだ。しかし、海外から集まった企業が現地で、しかも単独で福利厚生のシステムを整備するのは容易ではない。なぜなら、進出してきたばかりでは規模が小さいためスケールメリットが出せず、コストがかさむからだ。しかし一方で、企業としてはできる限り賃金を上げたくない。さらに、福利厚生を目的としたサービス・商品の提供は課税対象にならないため、タックスメリットとしても導入の動機はある。BOAは、その隙を狙っているのだ。
BOAは、5年後までにアジア全体で連結売り上げ100億円を目標として掲げる。まずは関係の近しい日系企業や、営業報奨金などを積極的に行っている金融系企業、特に人材の確保で苦労しているといわれるジャカルタなどの工場を重点ターゲットとして営業をかけていくという。
白石氏は11月にシンガポールで行われたBOAの設立記念パーティで、自身の夢を熱く語った。「これまで日本発で成功した海外ビジネスは製造業が多い。私は、日本発で海外で成功したサービス業としての先行事例を作りたい」。伊藤忠商事の松永氏も「白石氏にインキュベーションの匂いをぷんぷん感じた。弊社からも人材やネットワークを総動員して、もっとプロジェクトを加速させていきたい」と語り、アジア攻勢に本気の構えだ。
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