上野が浅草さえしのぐほど人を呼びこめる理由 「伝統」と「目新しさ」の両輪で集客を行う

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そんな上野にも課題は残る。たとえば「夜の上野は怖い」という評判だ。夜の飲食街では客引きも目立ち、かつては酔客がスキミングで所持金を抜かれた事件も発生した。地元でも警察と連携して見回りを強化するが、完全な客引きゼロには至っていない。

一方、自主的な企画で、夜の上野を活性化させた成功例もある。隣り合う湯島(文京区)と連携して、2011年に始まった「食べないと飲まナイトin上野仲町・湯島」だ。割安な参加料(前回は缶バッチ前売り500円+1回飲食800円)で、参加各店が用意する「ワンドリンク、ワンフード」が食べられるというもの。夜の飲食店をほろ酔い気分で回遊してもらうのが目的で、2018年10月で第36弾となった。

「下町バル ながおか屋」と「下町酒場さしすせそ」が「食べ飲まナイト」仕掛け人である長岡商事のお店だ(筆者撮影) 

提唱者は上野仲町で「下町酒場さしすせそ」(旧店名「あいうえお」)や「下町バルながおか屋」などを運営する長岡商事の社長・前川弘美さん。地元生まれの地元育ちで、かつては編集者だった経験を生かし、観光新聞を制作して集客を図ったこともある。

明るく楽しめるイベントと治安の強化で、「夜は怖い」イメージの払拭を図っている。

「お花見」の期待感と警戒感

これからの季節、上野が最も盛り上がるのが上野公園の花見だ。期間中は約350万人もの花見客が訪れ、「うえの桜フェスタ2019」も3月29日(金)から3日間開催される。

だが関係者の間では、歓迎の声と警戒する声が入り混じる。冒頭で紹介したように近年、外国人観光客も増え、日本人のマナーも悪化して、運営に苦労するようになったからだ。

・桜の木を折れる寸前まで引っ張って「自撮り」を行う
・木と木の間に国旗を結びつける
・鍋など、火気を使った宴会をする
・他の区からデリバリー業者を呼び、飲食と代金の受け渡しをする

いずれも運営側が禁止する行為だ。観光客が増えるのは喜ばしいが、急激な増加でマナーの悪化や文化の違いによる摩擦も起きる。トラブルが多発すればイメージも悪くなる。

「上野公園を管轄する東京都東部公園緑地事務所、上野警察署、上野消防署、そして上野観光連盟のスタッフが見回りを行うなど、安全で楽しめるお花見を目指します」(二木氏)

もともと観光連盟の活動は、戦後、上野公園にソメイヨシノの苗木を植える活動から始まった。その思いは、上野公園の桜がつぼみとなる頃、一段と高まりそうだ。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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