上野が浅草さえしのぐほど人を呼びこめる理由

「伝統」と「目新しさ」の両輪で集客を行う

これ以外に、一帯で集客するのが、美術館や博物館だ。中でも国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品」が、2016年に世界文化遺産に選ばれると関心が高まった。

「国立、都立、私立の美術館・博物館がこれだけ近くにあるのは上野だけ。上野地区12施設の共通入場券『UENO WELCOME PASSPORT』(上野ウエルカムパスポート)もあります」

二木氏はPRをしつつ、こう胸を張る。2015年3月14日に開業した「上野東京ライン」でJR東海道線と相互運転で結ばれたのも、新たな人の流れとなった。

「それまで遠かった神奈川県の人ともつながりました。横浜駅から約30分で上野駅に来られるようになり、特に横浜市民は美術館・博物館への造詣が深いと感じています」(同)

JR上野駅(写真:mizoula/iStock)

かつて、東北・上越新幹線の始発・終点を東京駅に「持っていかれた」上野駅の地元として、うれしい鉄道乗り入れだった。この時も「駅」や「街」で記念イベントを実施した。

バブル経済期の1988年に、JR上野駅に高さ300メートルの駅ビル建設計画が持ち上がり、地元が猛反発したこともある(バブル崩壊で頓挫した)。現在は上野地域の再開発を行う「全整協」(上野駅周辺全地区整備推進協議会)会長も二木氏が務めるなど、JRとも良好な関係だ。

「浅草」への秘めたライバル意識

台東区内のライバル「浅草」への思いはどうだろう。

実は取材するたび“浅草への対抗意識”を感じる。「歌舞伎など伝統芸能を重んじるのが浅草で、上野は何でも取り入れる」と話す二木氏。上野は「新しもの好き」の一面もある。

例えば、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年放映)で東京の舞台となったのが「アメ横女学園芸能コース」(ロケ地は上野アメ横センタービル)だ。同ビルでは、番組中で披露された「暦の上ではディセンバー」をベビーレイズが熱唱した。まだ知名度は低いが、2014年から“アメ横ご当地アイドル”が活動するなど、新たな訴求には熱心だ。

「『台東区の意識は、浅草中心』と思うこともある。合併前の下谷区と浅草区の歴史を引きずっており、地域住民意識の違いだろう。浅草は隅田川をはさんだ墨田区に目が向いているが、上野は秋葉原に近いので、集客の視点でも中央区と連携したい」(地元商店主)

浅草と張り合うのが差別化につながり、観光としては楽しめそうだ。前述したアイドル育成の発想でも、上野は秋葉原の流れを受けているように思う。

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