ちなみに、JR九州にも3877億円の経営安定基金が存在します。ただ、こちらはJR北海道より経営が安定していますから、不動産事業などの関連事業を含めれば営業赤字には陥っていません。さらにJR九州は上場を目指していますから、経営安定基金を返すために是が非でも収益率の悪い鉄道収入を底上げしようと考えています。
経営安定基金の運用収入がなくても全社では黒字ですが、しかし、鉄道事業は赤字で、全体でも収益力はそれほど高くなく、上場への道は厳しいのが現状です。そこで同社は、豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」の運行をスタートするなどの新たな取り組みを始めました。これが今後、業績にどれだけ好影響を与えるかに注目です。
JR北海道のトラブルは収益性が原因ではない
JR北海道の話に戻します。先ほど、同社の鉄道事業は営業赤字を計上していると説明しましたが、全事業のうち最も利益を出しているのは、実は駅ビル・不動産関連事業なのです。これはJR北海道だけでなく、JR三島会社に共通している特徴です。
特にJR北海道については、不動産業だけでは赤字が十分にカバーしきれないために、経営安定基金の運用益によってかろうじて黒字にしているのが実情なのです。
そして、今回の不祥事に関しては、保守に回す資金不足が原因であることも否めません。関連事業の収益や経営安定基金運用益から、経常利益が9億円、当期純利益も2600万円出ているといっても、十分な収益を確保しているとは言えません。無理やり利益を出している可能性もあります。そのことが、保守のレベルを下げており、列車火災や脱線を起こしている可能性は否定できません。
悪循環に陥ることは、絶対に避けよ
しかし、それだけが原因でもないはずです。収益力は低いですが、それで安全性を損なってもいいとは絶対に言えないはずです。つまり、一連のトラブルの根本的な原因は経営問題であり、JR北海道の内部体制にあるとも言えるのではないでしょうか。現場と本社との信頼の欠如や、現場力、経営力の低下があることも否定できないでしょう。
早急に信頼回復に努めなければ、旅客収入も減少してくるおそれがあります。一部では旅行会社のツアーなどで、鉄道をプランに入れるのを避けるところも出てきています。今回の事故や不祥事の影響で、鉄道収入全体が落ち込んでいるかどうかは、今のところまだわかりませんが、イメージが悪化したことは間違いありません。これで収益が低下すれば、さらに保守レベルが落ちるという悪循環に陥ります。経営の立て直しにも、さらに時間とおカネが必要となります。
いずれにしても、JR北海道は、経営の改善が急務です。このままの状態でいいはずはありません。政府の関与など、強力なリーダーシップが必要です。
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