渋澤 あとはアベノミクスの第三の矢がどうなっているのか、という点が気になるところですね。今年の春頃には秋口には思い切った成長戦略を打ち出してくるという期待があったのに、結局、国会で大きく取り上げられたものといえば、特定秘密法案くらいのものです。重要な法案だと思いますが、成長戦略とは直接関係のない話なので、第三の矢については、ほとんど手つかずといってもいいくらいだと思います。構造変化を進めなければならないのに、マインドセットがまったく変わらない。
今、安倍政権は1年前に発足した時点の焦点を、失っているのかもしれないと心配です。
中野 抵抗勢力の逆襲でしょうか。確かに、第三の矢に関しては、拍手できるものが何ひとつとして出てきません。
藤野 政治の動きが見えてこないところがありますね。第一の矢は、明らかに政治判断が成し得たものでしたが、第三の矢に関しては、それがまったく見えてこない。それどころか、特定秘密法案という、経済とはまったく関係のないところに焦点が移ってしまった。ここに2014年の日本経済の波乱要因があるような気がします。このままだと、ビジネス機会はあるのに、減益に陥る企業が出てくるでしょう。
人に投資してこそ、好循環が生まれる
藤野 結局、企業にとって大事なのは、人なんですよね。リーマンショック以降、企業はこの部分への投資をおろそかにしてきた。経営者の考え方が、完全にデフレ対応になっていたのです。
ちょっと話は違いますが、私が教えている大学で今、居酒屋でアルバイトをしたいという学生がものすごく減っちゃったんです。例のブラック企業だという評判が学生の間に浸透してしまって。よって大手の居酒屋チェーンも深刻な採用難に陥っています。そのため、採用コストがどんどん上昇している。
それが業績の下方修正の一因になってしまった。でも、「うちはブラックじゃないから」って安心はできないと思うんですよ。だって、人材不足が日本全体に広まってきているんですから。この問題は、2014年の株価にとって、大きな下振れ要因になるかもしれません。
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