そこで民主党は、議会権限を盾に報告書の公表を迫るだろう。司法省はそれを拒否する。これまた対立は法廷闘争に持ち込まれ、最後は連邦最高裁の判断を待つことになりそうだ。もっともそんなことでぐだぐだに時間を浪費している間に、誰かが中身をリークしてしまうような気もするが。
事ここに至ったからには、弾劾手続きなどまだるっこしい。選挙で決着をつけよう、との声も力を増すだろう。大統領の弾劾手続き自体は、下院議員の過半数の賛成があれば始めることができる。しかし弾劾成立のためには、上院議員の3分の2の同意を取り付ける必要があり、さすがにそれは至難の業である。他方、次の大統領選挙は来年11月3日である。既に民主党内では出馬宣言が相次いでいる。ここまで来たら、憎っくきトランプは選挙で引き摺り下ろせ、という気持ちはよく分かる。
「大統領選の重要な2つの法則」とは?
しかし大統領選挙には重要な法則が2つある。ひとつはこれだけ党派色が強まったアメリカにおいては、「選挙はかならず最後は接戦になる」ということ。そしてもうひとつは、「重要なのはトランプ大統領よりも、民主党から誰が挑戦するか」であるということだ。
2020年選挙を展望すると、民主党側には「これで決まり」といえるような候補者が見当たらない。おそらくは「2ダースくらい」の候補者が出馬することになるだろう。醜い足の引っ張り合いが始まることは確実だ。そうなれば、かならず党内にしこりは残るし、候補者は無駄な資金を使ってしまう。スキャンダルも出るし、致命的な失言も飛び出す。結果として、ベストな選択肢が残るとは限らないのである。
アメリカのメディアは、早くも「2020年選挙がトランプとバイデンならどちらに投票するか?」式の世論調査を始めている。もちろん、トランプ氏の方が低い数値になる。が、この手の調査はまったく無意味だと思う。ジョー・バイデン元副大統領はとってもいい人だが、トランプより3つも年上で失言王なのである。ああ、見ちゃいられない。
米大統領選挙は、とにかく現職が有利に出来ている。現職が負けるのは、イレギュラーな事態の後か(1976年、ジェラルド・フォード大統領)、とてつもない不況に襲われたときか(1980年、ジミー・カーター大統領)、党内が分裂して支持者が割れたとき(1992年、ジョージ・H・W・ブッシュ父大統領)くらいである。2020年の米国経済はそこまで悪化しないだろうし、共和党はトランプにしがみつくしかないだろう。つまるところ、トランプ氏を倒すことは大変な難事であると言わざるを得ない。
さて、2月はもう半ばを過ぎた。この先は非常事態宣言、モラー報告書、さらに米朝首脳会談や米中通商協議も待っている。ただひとつ確実なことは、「トランプ劇場」が今月も高視聴率を獲得するだろうということである。(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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