それにしても今月のトランプ氏は忙しい。中国との通商交渉が佳境を迎えていて、3月1日が締め切りになっている。合意がなければ翌日から、対中2000億ドル分の輸入品の関税を10%から25%に上げることになっている。もっとも中国側は、いくら譲歩してもいいから合意にこぎつけたい様子。3月中には、米中首脳会談がセットされるものとみる。
2月27日から28日には、ベトナム・ハノイで米朝首脳会談も行われる。北朝鮮は「終戦宣言」と「制裁緩和」を求めている。とはいえ、朝鮮戦争の終戦宣言には中国や韓国の同意も必要になる。そこでアメリカが「平和宣言」もしくは「不可侵宣言」を打ち出して、その見返りに北朝鮮側に非核化の前進を迫ることになるのではないか。
安倍首相の立ち位置がかなり難しい
悩ましいのはわれらが安倍晋三首相で、「トランプさん、変な妥協はしちゃダメですよ。弾道ミサイルの廃棄だけで米朝が合意したら、北朝鮮に核と短距離ミサイルが残ってわれわれが困るんですから!」と、どこかで釘を刺さなければいけない。
が、相手はトランプさんゆえ、あまり早く言うと忘れられてしまう。効果を上げるためには、なるべく会談の直前に「インプット」しなければならず、そのタイミングを測るのが難しい。・・・などと2月がやたらと忙しくなったのは、実は内政上の理由がある。「ロバート・モラー特別検察官の報告書が2月中に提出される」との観測が絶えないことだ。
ロシアゲートに関する捜査は、現在、最終段階にあるとみられている。2016年選挙においてトランプ選対を指揮したポール・マナフォート氏は脱税で、顧問弁護士のマイケル・コーエン氏は資金法違反で、長年の盟友であるロビイストのロジャー・ストーン氏は偽証罪で、次々と起訴されている。トランプ氏の外堀はほぼ埋まったと言っていい。後はどんな結果が出るかを待つばかり。
報告書の中身はもちろん定かではない。だが捜査結果によっては、大統領弾劾にもつながりかねない。それから目を逸らすためにも、トランプ氏は「政局」や「外交日程」を月内に数多く仕掛けなければならないのである。
それでは真面目な話、モラー報告書が出た後はどうなるのか。トランプ氏にとって幸いなことに、それが即、この世の終わりを意味することはない。まず、提出先は司法省であり、捜査結果を公表するもしないも新任のウィリアム・バー司法長官の胸三寸である。たぶんバー長官は公表しない。そういう人物だからこそ、長官に選ばれたのだし。
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