90年続く「つばめグリル」に客が絶えないワケ

日本の食材と東京ブランドへのこだわり

また、現状つばめグリルの客単価は昼が1300円で、夜が2000円。損益分岐ラインを考えると、1日400人程度の来店を目指したいとしている。その規模のつ集客が見込める地域となると、「複数線が乗り入れる、乗降客数が多いターミナル駅」(石倉副社長)の中や近辺に限られてくるという事情もある。

とはいえ、こうした乗降客数の多い駅は限られる。実際、品川には総菜店を含めて3店舗、東京駅・日本橋駅界隈には4店舗を構えている。そこで、それぞれのエリアでは、通常のつばめグリルとは多少異なる業態の店を出している。

新しい業態は経験値アップにつながる

例えば、昨年出店した日本橋高島屋では、「GRILL 1930」という肉のやわからさにこだわった店を展開。通常のつばめグリルでは、牛豚合いびき肉を使っているが、同店では牛肉のみでハンバーグを作っているほか、デミグラスソースにみそを加えるなど、和食の要素を多く取り入れ、箸で楽しめる洋食を提供している。これは高齢女性が多いという日本橋高島屋の客層を考慮してのことでもある。同じく界隈につばめグリルがある銀座には、「つばめや 和牛グリル」というステーキの店舗を出している。

つばめグリル品川駅前店は、路面店だ(撮影:今井 康一)

つばめが、業態に幅を持たせる理由はもう1つある。石倉副社長は言う。

「やはり、100年以上続くブランドを作るとなると、過去のいろいろな経験が重要になると考えている。さまざまな経験の蓄積がないまま、いざ何か大きな変化が起きたとき、適切な対処をするのは難しい。既存のフォーマットどおりの店を作るだけではなく、新しい要素持った店づくりにチャレンジするのも、経験値を上げるのに役立つと考えているので、今後も必要に応じて続けていくつもりだ」

業績自体は開示していないが、石倉副社長によると、現在売上高は連結で約60億円で、「ある程度の最終利益は毎期確保したい」としている。業績自体はリーマンショックや震災後に落ち込んだが、その後は徐々に回復してきており、「現在は2007年の水準まで戻ってきている」。

今後も「東京の中で60億円の規模を維持していく」というから、けっして高望みではない。背伸びをしすぎず、目の届く範囲で顧客が求めるものをしっかり提供する。それこそが、老舗洋食店が激変する東京の外食産業で生き残っていられる理由なのではないだろうか。

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