90年続く「つばめグリル」に客が絶えないワケ 日本の食材と東京ブランドへのこだわり

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「肉は引いた瞬間から、どんどん酸化が進んでしまうので、各店舗でひくようにしている。一方、ソースに使っているビーフシチューは、いっぺんに大量に作ったほうが、味がよくなるので、セントラルキッチンで作って各店舗に配送している」(石倉副社長)

国産食材へのこだわりも強い。つばめを訪れたことがある人は知っているかもしれないが、店頭にはその日使われている肉の産地と生産者の名前が書かれている。

ハンバーグと並んで人気の「トマトサラダ」(撮影:今井 康一)

「フランスのレストラン関係者から『フランスのレストランではフランスの食材を使っているので、海外から来たお客さんのお金が国内に落ちるという仕組みができているのに、日本は違う』と指摘されたことがある」と石倉副社長は言う。「ならばつばめは今まで続けてきた事を継続しよう、と。つばめには国内の生産者とつながっている強みがあり、(デベロッパーなどが)日本というブランドをどう売っていくかという課題と向き合ったときにつばめに出店オファーをしようという話になるのかもしれない」。

「つばめグリル」を訪れる4つのタイミング

つばめグリルが今も支持を得ているもう1つの理由は、出店戦略にある。現在、つばめグリルをはじめ、つばめの直営店の大半が、駅ビル、または駅に近い商業施設に入居している。そのほとんどが2000年に入ってからの出店だ。ちょうどこの頃から、JRの駅ビルの中に路面店を誘致する動きが加速し、出店の要請が続いたのに応えているうちに店舗の数が増えていった。

同社はもとより、「小さい頃、学生時代のデート、子どもができたとき、孫ができたときと人生において3、4回は訪れる機会があるレストラン」(石倉副社長)と、幅広い年齢層から支持を得ているが、近年は外食市場も大きく変わっている。ハンバーグはかつて家で食べるものだったが、世帯における人数が減ったことなどもあって徐々に外食や総菜需要が増えている。

創業4代目の石倉副社長(撮影:今井 康一)

とりわけ個食傾向が強まる中、駅ナカ・駅ビル飲食店の需要は底堅い。「以前は働いている30代くらいの女性が中心だったが、最近は年代の高い1人客が増えてきている。夜1人で出歩くことに抵抗感がある人もいるが、駅ビルなら安心感もある」(石倉副社長)という。

基本はデベロッパーからの要請を受けて出店する計画で、今年は都内に1店舗、来年は横浜に1店舗を出す予定だが、年間の出店数など目標は掲げていない。「東京の中でのブランドを確立したい」(石倉副社長)という思いがあるほか、「東京から遠いエリアにお店を出すと、その地域にもセントラルキッチンを新設しなくはいけなくなるので、投資がかさんでしまい、結果的に経営の自由度が下がってしまう」からだ。

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