全てを抱えこむ「良妻賢母」になってはいけない 「完璧主婦」の亡霊に囚われてはいませんか

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育児も可能な部分はシェアか、外注しましょう。子どもはかわいいですから、育児の分担は男性を家庭に引き込む絶好の機会です。

新しい時代の良妻賢母とは

まだまだ少数派ですが、夫の育児休業はたとえ短期間でも「ぜひ取ってほしい」と頼んでみましょう。「無理に取らなくていい」と理解のある妻を演じなくていいのです。

育児は分担すればするほど父親と子どもの絆が深まります。妻の独占にしていると、父親と子どもの結びつきは薄くなります(日本の母子密着の元凶の1つは父親の育児不在です)。

保育園の送り迎えのどちらかは父親という例が、昭和女子大学附属昭和こども園でも増えています。残業のときはベビーシッターに、病児保育もいざというときに頼れる人を手当てしておきましょう。

祖父母の援助が受けられる人は(できるだけ対価を払って)お願いしましょう。子どものかわいい時期をシェアすると、子どもへの愛が深まります。私もたくさんの方に育児を手伝っていただいたおかげで、子どもが多くの方に愛されました。

父親の出番は保育園から小学校へ行ってもたくさんあります。保護者参観、運動会、発表会、スポーツの応援や送り迎え、いろんな機会に父親と子どもの結びつきを強めるように仕向けましょう。間違っても「週末ゴルフも仕事のため」「オトコの人は付き合いが大事」「子育てで夫に迷惑をかけてはいけない」などと、女性自身が古い良妻賢母の亡霊に囚われないことです。

とはいってもこれは妻の意思だけで実現するわけではありません。夫が人生の価値をどこに置いているか、子どもや家族を出世や金儲けあるいは自分の趣味より優先しているかどうか、にもよります。父親が子育てをシェアすると第2子が生まれる率が高いと言われますが、それも価値観の反映です。

ひと昔前より職場の理解、子育て支援は進み始めています。女性自身も子育てという心躍るプロジェクトをシェアしようと、パートナーに働きかけましょう。それが新しい時代の良妻賢母かもしれません。

坂東 眞理子 昭和女子大学総長

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ばんどう まりこ / Mariko Bando

1946年、富山県生まれ。東京大学卒業後、1969年に総理府(現内閣府)に入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事、在オーストラリア連邦ブリスベン日本国総領事などを歴任。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め、2003年に退官。2004年から昭和女子大学教授、2007年から同大学学長、2014年から理事長、2016年から総長を務める。著書に330万を超える大ベストセラーになった『女性の品格』ほか多数。

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