保育コンシェルジュには、特に資格は求めていません。子育てに関心があり、意欲のある人を各区が採用しています。現在は20代から50代まで、保育士の資格を持っている人や、幼稚園の先生の経験がある人、子育ての経験のある方など、さまざまな方がいます。1区に1人が基本ですが、保留児の多い区は2~3人態勢にしましたので、現在では合計27人のコンシェルジュがいます。
2011年6月から本格展開していますが、1人の募集に対して2ケタの応募になることもあります。コンシェルジュは認可以外の保育施設の状況などの情報を随時把握しなければならないので、各施設に出向いたり、電話でこまめにアプローチするなどしています。市役所での研修の際に情報収集の徹底を義務づけたり、月に1回程度、「コンシェルジュ会議」を設けて、各区の取り組み内容を意見交換したりしています。
――保育コンシェルジュの設置による「サポートの力」が、待機児童対策の決め手となったわけですね。ただ、時間をかけてハード面を整備してきたからこそ、保育コンシェルジュの力が発揮できた、とも言えるのではないでしょうか。
そのとおりです。認可保育所の整備では、民間企業に協力いただくことで、短期間で大幅に受入枠を確保できました。株式会社が運営する保育所は、全国平均では2%にも満たないのですが、横浜市では30%近くに上ります。保育の質や倒産を心配する声もありますが、今の時代、よりよいサービスを提供しなければ、企業は生き残れません。それに、企業の参入にあたっては、より厳しい審査を行っています(編集部注:これらの拡充の結果、横浜市の保育定員数は2009年3万6871人から13年4月には4万8916人に増加した)。
まさに「あの手この手」で、公民一体となった「チーム横浜」の取り組みによって、待機児童「ゼロ」を達成したわけです。
――林市長は保育改革だけではなく、市・区役所の窓口サービスの向上など行政改革にも取り組まれてきました。行政サービスには何が足りないと感じ、どのように変えたのでしょうか。
市長に就任して、横浜市は確かに優秀な職員が多い、という印象を受けました。しかし、民間と違って役所というのは、営業マインドがないのです。「おもてなし」の感覚がないんですよ。私は民間で経営者としてやってきましたので、そこに違いを感じました。
若干、上から目線というかね、お役所目線的な文化が残っていた。これを変えていかなければいけない、と思いました。
ですから、最初に「おもてなしの行政サービス」と「共感と信頼の市政運営」をキャッチフレーズとして掲げました。市民の皆様との信頼関係がなければ、待機児童対策などの困難な課題を解決することはできません。「おもてなしの心」で市民の皆様と接してこそ、信頼関係の土台が築かれるのです。
そこで私自身、横浜市にある18の各区役所の窓口や局の職場を訪問し、職員一人ひとりに、「いらっしゃいませ」「お気をつけてお帰りください」など、お客様である市民の皆様に寄り添って言葉をかけるように伝えて回りました。つまり、職員意識の改革ですね。これをすごく重視しました。
住民票だとか、印鑑証明の発行だとか、いろんな相談に来られますが、その人たちに「区役所によく来てくれましたね」「わざわざ足を運んでくださって、ご相談いただいてありがとうございました」と、そういう気持ちになってください、と。
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