けれども、私はこれまで、民間の経営者としてやってきましたから、あえて「ゼロ」にこだわり、「ゼロ」と言い続けました。民間では「だいたいこれだけが目標」などという(漠然とした)目標設定はありえないでしょう。バジェット(政府などの予算、予算案)もそうですが、「予算はこう」で「ゴールはこうだ」と明確な計画を立てるのと同じです。
就任時には、横浜市には待機児童が1552人いました。それが100人にまで解消されれば、確かにおおむね解消されたことになります。でも、残り100人の方たちはお困りになるわけですよね。だから、「ゼロ」だ、と。これを掲げたわけです。
――公約どおり、今年4月にはゼロになったのですが、10月の調査では再び231人に増加しました。いったい、何が起きたのでしょうか。
待機児童ゼロを発表したために、子どもを預けて働きたいと希望する保護者が、さらに増えました。4月から10月の入所申込者数は、昨年度の3088人増に対して、今年度は3771人とおよそ1.2倍に増えました。ただ、申込者が増えている傾向自体は、より多くの女性が、子育てしながら社会で活躍しようとしている姿勢の表れでもあるので、心強く思っています。
待機児童を2014年春に再びゼロにするために、認可保育所を新たに28カ所整備し、また「NPOなどを活用した家庭的保育事業」や「幼稚園預かり保育」などの受け入れ枠拡大にも引き続き取り組んでいきます。
――あくまで「ゼロ」を目指す、ということですね。就任直後の話に戻りますが、まず市長が待機児童対策に「本気」であることを示され、その後、どのようなステップを踏まれたのですか。
まず、就任してすぐに、市長直轄のプロジェクトチーム「保育所待機児童解消プロジェクト」を作りました。
このチームには、各区役所のこども家庭支援課(保育所担当部署)の係長や職員をはじめ、それまで保育業務に携わったことのない技術系の職員、子育て中の若手職員もいました。私を含めて、メンバーは16人。2009年10月から翌10年3月までの活動期間中は、ほぼ毎週のように会合を開いていました。
このように現場の一線で、保護者に頻繁に会っている人を中心に、プロジェクトチームのメンバーを集めて、そして、そのメンバーに最初に聞いてみたんですよ。「どうやったら待機児童問題を解消できるのかなあ」「保護者の方は何を困られているのかなあ」と。そのうえで、「思いついたことをみんな言い合いましょう」と、意見を交換しました。
問題解決への大きな引き金になったのは、「横浜市にはさまざまな保育サービスがあるのに、市民の方にきちんと知っていただけていない」というメンバーの意見でした。そして、「働きながら子育てするには、認可保育所に預けるしか方法がない、と思い込んでおられる保護者の方が多い」ということに行きつきました。
実際に、保護者のニーズを探ってみると、「1日3時間、あるいは週に3日ぐらい預けるだけでよい」という方が相当数いらっしゃいました。
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