横浜市、「待機児童ゼロ」への限りなき挑戦

きっかけは、林文子市長の「聞く力」

一方で、横浜市はフルタイムで働く方のために認可保育所を整備し、また認可外保育施設の「横浜保育室」や「家庭保育福祉員」を充実させてきましたし、それだけではなく、パートタイムで働く方などにもご利用いただける「一時保育」や「一時預かり」、あるいは「私立幼稚園預かり保育」など、きめ細かくさまざまなサービスを展開してきました。さらに、2010年からは「NPO法人などを活用した家庭的保育」という新しいサービスも充実させ、多様なニーズにお応えできるように、環境を整えてきました。

編集部注:「横浜保育室」とは、待機児童の多い3歳未満児への対応として、横浜市独自の基準を満たした認可外保育施設。近くに公園があれば、園庭がなくてもマンションの一室でも設置できるようにしたもの。2009年の124カ所から13年4月には156カ所に拡大。

「家庭保育福祉員」は家庭的な環境の中で、保育者が少人数(3人~5人)の3歳未満児を保育するもの。「一時保育」「一時預かり」は、認可保育所や認可外保育施設で一時的に保育するサービス。

「私立幼稚園預かり保育」とは、幼稚園で正規の教育時間外も預かるサービスで、09年の67園から13年4月には145園と、倍以上に拡大。

ところが、こうした多様なサービスを保護者の皆様にきちんとご理解いただけるように、お伝えしきれていなかったのです。そこで、保護者には、一人ひとりのニーズに沿った適切なサービスを丁寧にお伝えしないといけない、という結論になりました。

結局は、サービスする側の情熱

――とはいえ、単に伝えるだけでは、待機児童をゼロにすることはできないと思います。

そうですね。横浜市の保育サービスの内容を、保護者の方にきちんとお届けするのは、意外と難しい。

そこで、全国で初めての試みである「保育コンシェルジュ」を各区役所に配置しました。保育コンシェルジュは保育を希望する方のご相談に応じ、保護者の一人ひとりのニーズに最も合った施設やサービスをフェイス・トゥ・フェイスで丁寧にご案内するサービスです。希望の認可保育所に入所できなかった方に、「利用できるサービスを私も一緒に探します」と、電話をすることもあります。

たとえば、認可保育所に申し込んだ保護者が、その希望の施設に入れなかった場合、その方に後から丁寧に電話をします。「残念だけども入れませんでした」と。そして、「(会社の勤務時間などは)どういう状態でいらっしゃいますか」「それならば、こっちのサービスもありますよ」「少しご自宅からは離れていますが、ここにも施設がありますよ」というようなやり取りをします。

モノの売り買いだって、ネットで情報を集めたり、広告宣伝を見るよりも、詳しい人から「これは、このような内容ですよ」と、説明を受ければわかりやすいじゃないですか。

保育コンシェルジュも保護者にお会いしたり、電話でお話を聞かせてもらったりして、人が人に向き合う。そうやって、丁寧な対応をした結果、「それならば、そこに入れましょう」となっていくのです。

「待機児童をどうやって解消したのですか」という質問に対して、「こういう施策」「こういう手法ですよ」と、施設拡充やサービスの展開についてザッっと話しますが、実は、保育コンシェルジュによるサポートという「人の力」がいちばん大きいんですよね。

そして、同じことをやっても、携わる人が本気かどうか。職員さんが「この仕事を達成しなければならない」「ひとりでも心配な保護者がいては困るんだ」「お気の毒だ」「どうしても働きたいと思っている方にはなんとかして差し上げよう」、そういう情熱がなければできないですよ、やっぱり。

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