もちろん、しかるときもありますよ。しかるときと、褒めるときをハッキリ分けていますね。しかる際は、「あなたに才能があってもったいないから、ちょっと言わせてもらいます」とやります。
――「一人ひとりに声をかける」とのことですが、横浜市は370万人都市で、職員が2万6000人もいます。本当にそんなことが可能なのですか。
確かに、そうおっしゃる方は少なくありません。ただ、私は民間の経営者としての経験があって、「人の思いは伝わる」ということを実感しています。この場に50人いるとすれば、その50人の人に一生懸命話をする。そうすれば50人の人は、次の誰かに話をしてくれる。トップが「伝えたい、伝えたい」という気持ちでいれば、徐々に伝わっていくんですよ。
これはダイエーで会長をしていたときに感じたのです。ダイエーには当時、パートタイマーが13万人ぐらいいました。全国のお店を回って、ひとつのお店に700人ぐらいパートさんがいるところもありましたが、そこで一生懸命話すと、その内容が近隣のお店にも伝わっていったのです。「この前、会長がきて、こんなことを話してたよ」と、じわじわ伝わっていきました。
ダイエーで全国を回ったときに感じているから、横浜市長に就任した際は「2万6000人が少ないぐらい」と、感じたほどです。「人数が多いから伝わらない」と思ってメールで一斉に出しただけでは、本当の思いは伝わらないと思います。
泥くさいかもしれませんが、こつこつ、こつこつ、就任してからこれまでの4年間は、できるだけ現場を回ってきました。
市民の皆様にも、月に1回は「ティーミーティング」で市役所にお越しいただいて話をしますし、「ぬくもりトーク」という取り組みでは、地域で活動されているグループの方のところに行って、話を伺うこともしています。「どのような思いでこのようなご活動をされているのですか」と聞く。そこで伺ったことは現場の声ですので、政策に反映することができます。
4年間で300回以上現場を回りました。そういうことが力になる、と信じています。
(撮影:梅谷秀司)
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