「偽ニュース」への抜本的な対策はありうるか SNSで公然と行われている「情報操作」の現実

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津田:FacebookやGoogleなどのプラットフォーム事業者は一国の政府よりも影響力がある存在になっている。彼らを一民間企業って言っていいのかというぐらいに巨大になり、グローバルに事業を展開している。一田さんは「事業者の努力でなんとか解決する話ではない」とも書かれています。Facebookという企業をどう思われますか。

一田:やはりネットがまだ普及していない国に無償で提供し、悪用されるということが、これまでの経験で十分にわかっているはずです。一応の形で対策はしています。でももし本気でやろうとしても、かなり難しい。

津田:僕もFacebookは「本当に努力しているのか」と思います。プラットフォームを押さえてしまえば、彼らはビジネスができる。個人から情報を吸い上げて、その吸い上げた情報に対して適切なサービスを出していく。

多くの人がFacebookは友だちと交流するためのサイトだと思っていますが、実態は広告代理店という側面があるわけですよね。個人からデータを吸い上げて、すごく細かくターゲティングができる広告を配信する。世界でも有数の「広告ビジネスの会社」として、その広告の利益を最大化するために動いています。

プラットフォーム事業者が想定していなかった事態

米大統領選以降、彼らに批判が集中し、さまざまな対策を講じるようになりましたが、昨年11月にはニューヨーク・タイムズ紙の報道で同社が問題発覚以前からロシアの選挙介入を察知していたにもかかわらず、同社が介入を認めた2017年9月まで隠蔽工作を続けていたことが明らかになっています。2015年には、大統領候補者であったトランプ氏がフェイスブックに投稿した差別的発言への対応について上層部で議論したものの、共和党からの批判や支持者の反発を恐れて黙認していたそうです。

何より個人情報の扱いを巡る同社の不祥事はいまも定期的に起きています。これらの事実から考えて、社会にどのような不安が起こってもよほどのことがない限り、その利益追求の姿勢を変えることはないと思われても仕方がないのではないでしょうか。

これはグローバルにプラットフォームが広くいきすぎたがゆえの問題です。フェイクニュースを使ったハイブリッド戦で使われる、あるいは、ヘイトスピーチの温床になるということまで、プラットフォーム事業者はたぶん当初は想定してなかった節がありますよね。

ウェブ広告を出稿する企業はようやく自らのブランド価値を守るために「ブランドセーフティー」も含めて撤退する動きが出ています。しかし時すでに遅しという感もあります。

(後編に続く)

成相 裕幸 会社四季報センター 記者

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なりあい ひろゆき / Hiroyuki Nariai

1984年福島県いわき市生まれ。明治大学文学部卒業。地方紙営業、出版業界紙「新文化」記者、『週刊エコノミスト』編集部など経て2019年8月より現職。

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