日本は「偽ニュース」のダメージが小さい国だ

伊藤穰一氏が語る「ニュースメディアの課題」

MITメディアラボの伊藤穰一所長にニュースメディアの課題について聞いた(撮影:尾形文繁)
芸術領域から人工知能まで、あらゆる分野で世界最先端の研究を行うマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボで所長を務める伊藤穰一氏。ニューヨーク・タイムズをはじめ名だたる一流企業で役員を務め、実業家や投資家としても活躍する。メディアの未来、フェイクニュース問題、民主主義の危機――。世界のオピニオンリーダーに話を聞いた。

山田:ネットメディアをめぐり、フェイクニュースやアドフラウド(広告詐欺)など、マイナスイメージの言葉が飛び交っています。メディアの未来をどう考えていますか。

伊藤:今、起きていることは、スパムに似た現象と、ハッキングに似た現象に分けられる。スパムに似た現象は、ツールである程度フィルターできるようになると思う。これはもう時間の問題だ。

ただ、問題はハッキング。進化するハッキングに対しては、対策もいたちごっこになるしかない。こういう戦いは、今後もなくならない。すでに、メディアはバトルフィールド(戦場)にいるからだ。

ところが、ニューヨーク・タイムズも含めて多くの伝統的なニュースメディアの人たちは、メディアがバトルフィールドの中にいる、ということをわかっていない。それどころか、自分たちがネット時代においてどういう役割を果たしているのかを理解できていない。

既存メディアの役割は「エサの投入」

山田:「伝統的なニュースメディアが果たしている役割」とは、何でしょうか。

伊藤:ネットにエサを投入する役割だ。フェイクニュースを作っている人たちにとっては、ニュースは自らの主張を広げるためのエサにすぎない。新聞やテレビが報じるニュースの持つ信憑性を利用することで、トラフィックを集めている。

ただし、フェイスブックも含めプラットフォームでやり取りされている情報の絶対量からすれば、フェイクニュースの量は、ほんのわずか。だから、フェイスブックにとっては、もっとも重要な役割である身近な人とのコミュニケーションを守るために、タイムラインに流れるニュースを排除する方向に動いた。

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