日本は「偽ニュース」のダメージが小さい国だ 伊藤穰一氏が語る「ニュースメディアの課題」

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山田:表から排除すればするほど、ダークウェブのような形で「闇のニュースフィード」が生まれるかもしれない。

伊藤:いくら排除をしても、いたちごっこであることは変わりない。

ただ、国によって、フェイクニュースによるダメージには差がある。最も大きなダメージを受けているのはアメリカだ。アメリカは定められたルールの順守によってフェアネスを保ってきた。ところが、大統領の(ドナルド・)トランプですらルールを破っている今、ちゃんとルールを守っているのは一部の人間だけで、もはや民主主義も機能していないのではないか、と疑われるようになった。

注目すべきはドイツの行方

ルールの順守によってフェアネスを保つ、という今のような民主主義の考え方は、生き残るのか、生き残らないのか。見どころといえるのは、ある程度民主主義が機能してきたドイツだと思う。今、アメリカの支配から出ていって混沌としているヨーロッパにおいて、ドイツはちゃんとした民主主義を機能させられるのか。それとも瓦解するのか。

一方で、日本の民主主義は、昔から不透明。アメリカと違って、なんでもかんでも表に出るわけではない。政治もマスコミも透明とはいえない部分がたくさんある。日本の人たちは、本音と建前があるとわかっているから、表に出ていることだけがすべてとは考えていない。だから日本は、アメリカと比べてフェイクニュースに感染した場合のダメージは小さいように思う。

山田:おもしろい見方ですね。たしかに日本のメディアは、重要なことであっても横並びで報じないようなことが多々ある。

伊藤:ニューヨーク・タイムズの社外取締役に就任することが決まったとき、僕のことをメディアで最初に批判したのがニューヨーク・タイムズだった(笑)。こんなことは、日本の新聞ではありえないでしょう。

だから、そういうニュース報道に慣れている国と、あまりまずいことを書かないニュース報道に慣れている国とでは、フェイクニュースの受け取られ方がちょっと違うと思う。

山田:組織的にフェイクニュースを作る動きがあることも懸念されます。

伊藤:ロシアが、フェイクニュース工場になっている。米国の大統領選では大量のフェイクニュースを量産し、それをツイッター、フェイスブックなどで、機械的に作った大量のアカウントを使って拡散させていた。

これは、すでにパターン化されており、今でも繰り返されている。聞いたことないようなそれらしいメディアが、話をぐちゃぐちゃにしてインチキ記事を書く。それがリツイートされて拡散されていく。ノイズであるにもかかわらず、それをマスコミにピックアップさせれば勝ち、というのが典型的なパターンだ。

同じような事故は頻繁に起きている。SNS上での攻撃を専門に行うPR会社もあり、ターゲットをガンガン攻撃している。攻撃をするために同じ日にツイッターアカウントをブワーッと作って攻撃をしている。日本ではあまり表面化していないようだが、メディアへの攻撃もすごい。こうしたことは頻発している。

山田:まさにバトルフィールド。自分たちが正しい情報を発信しているからといって、それでいいということではまずい。

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