SNS浸透と「高級料理店」に必要な格式の狭間 これからはサービスで顧客をつかむ時代だ

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最近の高級店にはSNSの浸透もあり、さまざまなお客様が訪れています(写真:iStock /uygaar)
ジョエル・ロブションなどの一流レストランで、サービス部門のトップを務め、2012年にはサービスの世界選手権で世界一に輝いた男・宮崎辰氏。独立した現在は、メートル・ドテル(サービスの責任者)としてだけでなく異業種へのコンサルティング活動なども続ける宮崎氏の著書「世界一のメートル・ドテルが教える 利益を生むサービス思考」をもとに、最新のレストランにおける「見た目」について同書より抜粋のうえ、紹介します。

サービスとは「見た目」である

最近のレストラン事情で明らかに昔と変わってきたのは、視覚的な情報がふんだんに流れていることです。スマートフォン等の端末を扱ってSNSを使い、大量の視覚情報が人々の間を飛び交っています。

その影響として、高級な店でもカジュアルなお客様が増えています。私たちが駆け出しの頃は、二つ星・三つ星クラスの店にジーパンやポロシャツのようなカジュアルな格好で行くのは憚られました。恥ずかしいというか気後れしてしまって、一流店に行く前には、どんな服装にするかということから悩んだものです。

私が初めて行ったグランメゾンは、有楽町にある「アピシウス」でした。20歳の頃、一着しか持っていないリクルートスーツで行って、すごく緊張していたのを覚えています。周囲のお客様も貫禄があって、おしゃれでかっこよかった。その中で緊張して、何を食べたかも忘れるほどでした。 ところが最近は高級レストランでも、20代の若者がものすごくドレスダウンした出で立ちで、リラックスして食事をしています。

なぜそうなったかというと、やはり情報が簡単にとれるようになったからでしょう。「食べログ」とか「ぐるなび」とか、レストランの情報がひと目でわかるサイトやSNSが発達し、インスタグラムの画像も瞬時に出回る時代です。誰がどんな格好で何を食べ、何を飲んでいるのか、店内はどんな雰囲気なのか、予算はどのくらいあれば大丈夫なのかなど、手にとるようにわかってしまうのです。

「あのレストランにはこんな人も行っているのか。こんな格好でもいいんだ。じゃ、行ってみるか」というノリで気軽にやってくる。店側からしたら、昔のような入りにくさがなくなり、一見のお客さんも増えて、営業的にチャンスではあります。

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