SNS浸透と「高級料理店」に必要な格式の狭間 これからはサービスで顧客をつかむ時代だ

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それ以前には「引き継ぎノート」というものがありました。前日の担当スタッフが、お客様の反応や店内の出来事、システムの変化などを記録していく。次の担当はそれを見てから仕事にとりかかるわけですが、この方式だと適当に読み流している人、ノートを見ない人も出てきてしまいます。情報共有が徹底できていなかったのです。

「世界一のメートル・ドテルが教える 利益を生むサービス思考」 (光文社新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ところがLINEだと「既読」がしっかりと表示されますから、伝達事項を忘れた人や守らなかった人は「LINEで伝えたのに」と責任の所在が明らかになります。最低限の情報伝達はこれで済ませられるのです。 その上でスタッフ全員が集まった時には、「お客様のためのミーティング」を行います。

内容は、お客様情報のシェア。これまでは「このテーブルのお客様は今日が誕生日」「このテーブルのお客様は××アレルギー」といった情報をシェアしていましたが、最近では一人一人のお客様にカードをつけて「このテーブルの方は前回×月×日に来店されました。その際、奥様はワインを飲まずに、ご主人だけがワインをペアリング(1皿に1種類ずつ、ワインのプレゼンテーションをするサービス)で飲まれました。今回は3名でのご来店なので接待だと思われます」というように、予約の電話をとった人間が報告します。

さらに前回サービスを担当した人間が、「こういう感じの人だったので、サービスではここに気をつけて」とアドバイスもします。

顧客満足に繋がる情報をシェアする

外国人のお客様だったら「中国からのお客様でコンラッドに宿泊されています。ハネムーンでのご旅行です」と報告する。するとメートル・ドテルが「ハネムーンだったらデザートの時にお祝いのケーキを贈ろう」と提案して「パティシエに伝えて」と伝令を走らせる。 このようにして、顧客満足に繋がる情報をシェアするのが、最新のミーティングのあり方です。

このミーティングを定期的に開くためには、掃除はルンバを使って夜のうちに済ませておくとか、ネットを活用して連絡ミーティングはLINEで済ませるとか、他の業務を合理化して時間をつくることがポイントです。

レストランは本来、お客様の満足のためにあるのですから、その目的に向かって真っ直ぐに時間を使う。 それがダイレクトにサービスの価値に繋がってくる時代です。

宮崎 辰 メートル・ドテル
みやざき しん / Shin Miyazaki

1976年東京都生まれ。高校卒業後、辻調理師専門学校に入学。同校フランス校へ進学する。南フランスでの研修を経て、芝「クレッセント」、六本木「グランドハイアット東京」、銀座「オストラル」、南青山「ピエール・ガニエール・ア・東京」、恵比寿「シャトーレストランジョエル・ロブション」などを経て独立。2012年には、「クープ・ジョルジュ・パティスト」が主催する、サービス世界コンクール世界大会で優勝し、日本人で初の「世界一のメートル・ドテル」に。現在は、ミシュラン星付きレストランにてメートル・ドテルとして勤務しながら、自身の団体Fantagista21を中心に、サービスの普及、コンサルティング、講演など幅広く活動中

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