「残念無念ではない」と記者会見で“永守節”連発、日本電産が東洋電機製造への買収提案を取り下げ
「残念無念とは思っていません」「この経営者とは一緒にやっていけないと思った」−−。12月15日、東京都内で行われた会見の席上、日本電産の永守重信社長は独特の言い回しが健在だった。
日本電産は同日、鉄道機器用モーターを手掛ける東洋電機製造<6505>の買収を断念すると発表した。今年9月に買収提案し、東洋電機が導入している買収防衛策に沿って手続きを進めていた。3度にわたる質問状によるやり取りなどを繰り返したが、提案の有効期限(15日)が迫っても東洋電機側の抵抗が激しく、「これ以上時間をかけてもシナジー効果を出せるか疑問と判断した」(永守社長)という。
両社の溝が埋まらなかった理由は、日本電産側の手法に東洋電機側が反発したためだ。日本電産はM&A戦略を積極的に活用し家電や事務機、車載用など事業の範囲を拡大してきたが、これまで成功させてきた27件ものM&A案件すべてを友好的に実施してきた。永守社長が買収先企業の経営者と粘り強く事前交渉を行い、その結果相手の合意を得たうえでM&Aの公表をしてきた。
ところが、今回は相手と同意する前に買収提案を公表。事前交渉もいっさい行われていない。東洋電機側にTOBの意向を伝えたのは9月16日午前と公表の直前だった。「いきなり来られて……。だから非常に不満」と、東洋電機の大澤輝之社長は弊社記者に対し不愉快を漏らしていた。抵抗の底流には「日本電産の子会社になれば猛烈に働かされる」という不安もあっただろう。
交渉は膠着状態だったが、日本電産の社内には「有効期限後に、(TOB価格を変更するなど)何らかの形で買収を再提案する」との考え方もあった。ただ、永守社長は日本電産のまさに「牽引役」であるだけに、買収交渉が長引くことで経営に面する時間が今後も割かれるようなことがあれば、業績への影響が懸念される。永守社長が「(11月第3週目以降の)この3週間は異常」と語るように、世界的な景気減速の逆風で経営環境が一層厳しくなっていることも影響したであろう。結局、日本電産は東洋電機に対する買収を断念した。
3カ月に及ぶ買収騒動は、あっけなく幕を閉じた。ただ、買収断念による業績への影響はないだろう。むしろ、交渉の長期化リスクを避けることができたという意味で英断だったのではないか。目下、外部環境は厳しさを増しているが、日本電産は販売好調のネットブック向けHDD用モーターを拡大中。内製化促進など合理化も、さらに進めている。東洋経済オンラインは下記の通り、前回の業績予想を踏襲する。
(梅咲 恵司)
(写真は9月16日の資本業務提携発表時の永守社長、撮影:風間仁一郎)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
◎本2008.03 742,126 76,833 62,683 41,156
◎本2009.03予 805,000 90,500 90,500 58,500
◎本2010.03予 922,000 100,500 100,500 60,000
◎中2008.09 371,658 40,218 43,057 27,840
◎中2009.09予 430,000 45,500 45,500 29,000
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1株益¥ 1株配¥
◎本2008.03 284.0 55
◎本2009.03予 403.4 60
◎本2010.03予 413.7 60-65
◎中2008.09 192.1 30
◎中2009.09予 200.0 30-32
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